「大きな嘘を突き通すためには、小さな事実を織り込むこと」とは、
J.アーチャーの言葉だったと思いますが、この物語はそれを全く当たり前のごとく
紡ぎ上げ、読者に破綻を感じさせるどころか「もう一つの江戸時代」を史実のように
見せつけてくれております。
なにが圧巻かといえば、鎖国の完成あたりから、武家諸法度や田畑永代売買禁止令などの
「小さな事実」を混ぜながら、男女のジェンダー逆転の要因を「あるもの」に求め、
結果としてここに描かれている状況を必然として描ききっていることです。
読んでいて、よくぞここまでと感嘆のため息ひとつです。
そしてそのバックボーンをしっかり立てているから、主題である愛憎劇が素晴らしく
際だつわけで、レビュアーが取り上げているように、「1巻で引きつけ、
2巻で仕切り直し、3巻で綺麗に纏めた」( いめ "ラリー" 氏)という
レビューに強くうなずく次第です。
しかも恐ろしいというか嬉しいことに、4巻は更に物語の重厚さが増すであろうと
はっきり予感できる最終頁の1枚ゴマに、「次巻は来年末だけど、待つぜ」と読み手に
確信させてしまうあたりに作者の力量を感じてやみません。
でも、そんな枠組みの重厚さ云々以上に、登場する人物の哀歓が一本の線として流れて
いるから、読み終わってため息のひとつでもつかねば収まらない気分になるのでしょう。
軽く「愛」などという言葉では片付けられない物語。もう目が離せません。必読です。