現代中国の問題を客観的に報じた書物としては、白眉である。
我が国にとって最も危険なのは、貧乏な小国の北朝鮮ではなく、大国の中国である。そのやっかいな隣国は、一党独裁であり、したがって非民主的で、表現の自由もなく、法の支配もなく、おまけに市場経済も機能していないときている。本書を読んで、改めて現代中国の深刻ないくつもの問題を知り、呆然としてしまった。
文化大革命が真っ盛りの頃、高校生だった私は、近所の書店で「毛沢東語録」を買ってきて読んでみた記憶がある。その中に、「銃口から政権が生まれる」という記述を見て、なんとなくきな臭さを感じたが、当時は、文化大革命こそ、人間性を取り戻すためのすばらしい取り組みだと一般に評価されていた。しかし後日、文化大革命が残忍な権力闘争であったことを知って、情報が正確に伝わらない中国の不気味さを痛感させられた。
杉本信行がプロの外交官として、情報を収集し、国益を守ってきたことに敬意を表したい。おそらく本書では、まだまだ本音を述べていないように思う。私たちがそれに接する機会があれば、幸いである。