もともと1942年に養徳社から出たもの。その後も加筆され、本書は1953年に出た新潮文庫版を底版としている。さらに仮名遣いを改め、カラー写真も収録されている。
亀井勝一郎の代表作のひとつで、戦後の奈良ブームを引き起こしたことでも知られる本。しみじみとした味わいがあり、想像以上の名著であった。一方で、第二次大戦中に書かれたことによる影響も強く、国粋主義的な側面も目立つ。
取り上げられているのは、斑鳩宮、法隆寺、中宮時、薬師寺、新薬師寺、東大寺、法輪寺、唐招提寺。その建物、歴史、仏像についてじっくりと描かれている。特に歴史的な考察には深みがあり、聖徳太子や聖武天皇など、著者の脳裏に浮かんだ姿が、そのまま伝わってくるかのようだった。
いま読んでも充分に面白い本。ただ、ガイドブックに使ったりすると、現在の観光開発され、商業化した寺とのギャップに驚くかも知れない。