武家諸法度の改定で、寛永12年(1635)に参勤交代制が始まり、各大名は屋敷地を、江戸城の周りに賜りました。徳川御三家や禄高の高い前田家や柳沢家など雄藩は、広くいくつもある屋敷地に、屋敷と共に今に残る名庭を造営しました。
本書のユニークさは、その庭を、美学的あるいは庭園史的に解説するのではなく、家臣たちが書き残した庭園拝見の記録に基づき、庭園がどう使われたかを考察している点です。○今見ると、石や樹木しかない庭ですが、当時庭を実際に逍遥すると、村落や町を真似た地区などがあり、入園者がいる時だけ見せる園主が凝らした趣向があり、酒肴と共に大いに楽しめたようです。○綺麗な庭園を拝見できる者は選ばれた者で、その上庭内で藩主に出会うこともあり、当人は感激して藩主への忠誠心を強めたようです。臣下との主従関係を深める道具として使われたようです。○広大な庭園は季節で成長する植物で形づくられていて、現状を維持するために、樹木を伐採し、草を取る多くの人足が必要でした。草取りや高木の枝打ち職人は、江戸郊外の豪農の仕切りで集められたようです。その手間賃が豪農の収入と、その日暮らしの貧しい農民の糧になっていたようです。
今まで言われてこなかった大名庭園の側面が、史料から語られています。形があり美しさを追求して造られた対象を、ひたすら美しさの源を訊ねるのではなく、それが社会で実際にどう使われて、どういう役割を果たしていたかを知るには絶好の1冊です。