著者の心に響いたサービスが72話と豊富に紹介されているが、その分内容はあまり深堀りされておらず、琴線に触れるものが少なかったというのが正直なところ。個人的に、興味のあったエピソードは72話のうち15話程度だった。
理由として、本書の72のエピソードを通じて著者が伝えたかったものは何なのか伝わってこなかったこと、単純にサービスの良し悪しで判断している事例が散見されることなどが挙げられる。
特に「ノーといわないレストラン」(第38話)については、メニューにないオーダーに対するレストランの対応を語っているが、この中で、著者の学生達がコンパで居酒屋に行った際、寿司が食べられるかどうかを聞き、(当然だが)寿司は置いていないと冷たくあしらわれ、「彼らが、この居酒屋のサービスに大きくバツをつけたのは言うまでもない」と書かれているが、このようなことでサービスの良し悪しを判断している著者も、その学生も本当に大丈夫かなと思ってしまう。
あるレストランでの対応に感動し、それを基準に他の店でも当てはまるかどうかを検証してみてもまったく意味がない。
他にも、小料理屋で(何か特別な事情があるならまだしも)メニューにないお酒をわざと聞いてみてサービスの反応を見ている事例があるが、何の参考にもならない。また、このような要望に応えられない店のサービスが悪いとは限らない。
その他、何回か宿泊しているホテルでの宿泊カードの記入についての不満(第16話)、公務員の人事評価(第31話)、開店時間を決めるのはお客(第53話)、本当の秘書とは(第72話)などを読んでもサービスの本質が伝わってくるという感はない。
心に響くサービスとは、ちょっとした気遣い、思いやりを感じるホスピタリティにあふれた心であり、上述のエピソードなどは単なる著者・学生のわがままである。
もちろん、そのような事例も紹介されているが、上述のようなエピソードを読んでしまうと、著者の”心に響くサービス”とはどういうものなのか伝わってこない。
著者自身に接客やサービス業での実務経験はあるのだろうか。