著者は割と異端派の経済学者が多いジョージ・メイソン大学経済学部の教授で、ブログ「Marginal Revolution」の運営者。
ブログでも面白い視点を提供してくれていますが、本書もまた新たな視点でアメリカ経済を捉えており、本国では随分と論争を巻き起こした模様。
本書での著者の主張は、少し乱暴にまとめると「アメリカって実はそんなに経済成長してないんじゃない?」「その原因(の一つ)はイノベーションの停滞だよ」ということ。
今まで、自分たちが経済成長に成功していると考えていたアメリカ人(特に経済学者)に対し、経済成長は「勘違い」と指摘した訳ですから、そりゃ論争も巻き起こります。
内容にざっくりと触れますと、
1章で過去の経済成長のドライバーを指摘し、その中で特にイノベーションが減速していると主張
2章は経済指標がいかにして実態から乖離した数値を示すかの具体例
3章ではイノベーションの中で、いかにインターネットが特殊な存在であるかを指摘
4章は低成長下での政治がいかに困難なものとなるかを説明
5章では「経済成長は勘違い」という文脈で、先般の金融危機を再考
最終章では、それでもアメリカ経済の将来を楽観視してもよい(かもしれない)理由を挙げて締めくくり
といった流れです。
論理展開がやや粗い、主張が結晶化されていない、といった不満はありますし、
4章と5章はやや取ってつけた感がある、など必ずしも良書ではないのかもしれませんが、
2章における経済指標の歪み・3章におけるインターネットの特異性の指摘が
非常に面白く、経済/社会を捉える上で非常に面白い視点を得ることが出来ました。
なお、読みやすい文面の割に、経済学の常識的な見方を暗黙の前提として書かれており、
かつ、それにも関わらず常識的ではない結論を導く箇所が多いので、
この本を読んで勉強するとか、この本だけに依拠して経済政策を語るのは危険かと思われます。