今の時代、とても切り口として珍しい部類の本である。派遣切り、非正規雇用、ワーキングプア、貧困など、一時期相当吹き荒れた「下位層の問題」には全く背を向けて、「上位層の課題」を扱った本だからである。ただ、もしかして、未来に振り返ると「2010年が社会の動きのターニング・ポイントだった」ってことになりえるのかも・・・
本書の内容は、「会社は正社員を容易に解雇できないので、大企業にとってみれば社員は「負債」であり、社員からみれば雇用自体が会社の「債権」を持っていると考えられる。なので、社員もこの点を十分に意識して、個人個人仕事を頑張りましょう」ってな感じ。
現役の野村HDのグループHR(Human Resource:人事)企画室長が書いた出版本にしては、「早期退職制度(=要は肩たたき)が望ましい」だの「正社員と契約社員の比率は、社会の淘汰(ダーウィン主義のような)で自然に最適割合が決まってくる」だの、組織人としての記述としてはとても「危険な香り」がしすぎる。とはいえ、社会に与える「組織に属さない人々」の影響力と「大企業サラリーマン」の影響力は、リアルワールドでは圧倒的に後者なので、こういった類の本がたくさん世に出ることのほうが、世の中はより良くなっていく気はする。