トリュフォーの自伝的作品であるこの『大人は判ってくれない』は、トリュフォー自身または友人たちの幼少期のエピソードをカードにまとめ編集したもので、作り話は一切ないそうだ。
トリュフォーの分身アントワーヌを演じたジャン・ピエール・レオのこの映画における存在感についてはいまさらふれるまでもないが、大人になってから出演している『アメリカの夜』(トリュフォー)や『男性・女性』(ゴダール)では、子供の頃のオーラが消え失せてしまい、ケチな小男という印象の俳優に落ちぶれてしまった不思議な人でもある。
母親の連れ子であり、学校ではイタズラを繰り返し鬼教師から目をつけられるアントワーヌが、友人と学校をサボるようになり、しまいには盗みを働いて鑑別所送りとなる。こんなにも暗い少年期を描きながら映画が辛気臭くなっていないのは、大人たちからの信頼や愛情の代わりに<自由>を勝ち得た少年の明るさが映画全編を覆っているからだろう。
ともすると犯罪者一直線のトリュフォーの転落人生を支えたのは、この人の明るさに引きつけられた友人たちであり、中でも<映画>はトリュフォーにとって最良の友人であったにちがいない。もしかしたら、子供時代のワクワクとした好奇心をいつまでも失わなかった人しか、、優れた映画監督にはなれないかもしれない。