内容はなかなか記録や調査の学術的な要素が多くて読みづらい面もあります。著者の薬師さんという人はヒマラヤ研究では日本の第一人者だそうですがさすがによく調べていて確かに労作です。副題にあるように19世紀初頭から20世紀初頭までぐらいのまさにインド測量局(イギリス植民地下の)とその現地人担い手(パンディット)たちの活動と調査の記録です。従ってインド統治と密接に繋がっていた測量局のイギリス高官やその下で働いた優秀な現地人(パンディット)達が時系列で連綿と出て来ます。
1800年代半ばといえば今から150年以上も前、日本はまだ江戸時代末ですがその時代に六文儀やプリズムコンパス、沸点温度計、測高計、歩測などを使って緯度、経度、高度、距離などを測っていました。しかも世界の屋根カラコルム山脈やヒマラヤ山脈、チベットの高地で、盗賊や役人の監禁処刑など身の危険を冒しながら。それも何千キロもそして何年もという困難極まる探検旅行をしながら。
人工衛星利用のGPS等で簡単に測量できる時代からは想像も及ばない方法と体力で軽々とカラコルム峠やエベレスト近郊峠を越えてチベットやモンゴルまでも調査活動をしています。ともあれ調査地は今のアフガン、インド、ネパール、チベット(自治区)中国、ブータン、等と多くの国にまたがり多くの地名が出てくるので世界地図が離せません。しかし基本は大英帝国直属下のインドが舞台になっていますからその時代のインド史の側面も。交易面での記述も多く、チベットの中心地のラサへ行ってそこの文化を吸収する事例も各所に記載されています。
今では5000m級を走る青海チベット鉄道がありますが地球の最高峰群の峰峰を徒歩で越え広大無辺のタクラマカンや青蔵高原を探検する…政治的密命を帯びているとはいえ何かロマンを感じさせる探検史の書物です。