(あらすじ)ピアニスト安積界の婚約者が誘拐された。犯人の要求は、札幌音楽祭で演目にない「ベートーベン・ピアノ・ソナタ第29番/ハンマー・クラヴィーア」を完璧に演奏すること。札幌とロンドンで、界にゆかりのある人物がそれぞれに事件の調査を進めるが…。
(感想)登場人物に魅力がないわけではないのですが、出てくる人物が例外なく別の人物から心中で辛辣にこきおろされているので、読んでいてけっこう疲れました。誰に感情移入して読めばよいのかわからない点はマイナスと感じます。
ミステリとしての出来も、もうひとつと言えます。プロローグの情報と、中盤までの登場人物の経歴を見ていけば、犯人のうちの一人と動機はあっさりわかってしまいます。
小説の中核となるアイディアは非常に秀逸で面白く、音楽に造詣の深い経歴をお持ちの永井するみさんならでは、と感じるのですが、それを膨らませた小説そのものの出来としては、ひねり不足・練りこみ不足な感は否めないところです。
(ミステリ+音楽小説+ハーレクイン・ロマンス)÷3として考えればよいのかもしれませんが、このあらすじとページ数と値段から、勝手に重厚な中身を想像して購入した私のような者からすれば、若干肩透かしを食らった思いです。