大阪のどこかに本当にこんな街があり、この本に出てくる人々がいたのではないかと思うくらい、この商店街の人々の生き様と各人の心の動きが鮮やかに描き出されています。特に、世間では教養がないと思われている人々が、時折直感(直観)的に真理を見抜き、それが日常の生活を懸命に生きるなかで培われたものであるということ、優しい人がしばしば寂しい人であることが、ストーリーの中で気づかされ、胸にしみます。この商店街の小さな世界は、総体としては人間の汚い部分をかき集めたようなどろどろです。しかしそれを構成している一人一人に光をあてたとき、皆それぞれにストーリーがあり、それぞれに悩み、苦しみ、他の人々の思わぬ暖かさに触れてちょっとうれしくなったりしているのです。そうした姿に読む側も人間のもっとも人間くさい心を見出だし、どれもハッピーエンドとは言いがたいにもかかわらず、何だか心がホッとするのです。