能解警部の部下・奈蔵渉は、警察官でありながら、連続
殺人鬼で、能解を「壊す」ことを、人生の目的にしている。
そんな奈蔵は十年前、恋人の家が所有する別荘で、
自分が手を下していない猟奇殺人に遭遇していた。
当時、その別荘に居たのは、奈蔵と恋人の沓水さやか、さやかの義弟の沓水流、
そして、奈蔵の義理の姉妹となるはずだった、柊元奈緒美と柊元由美の計5人。
そのうち、さやかと奈緒美は何者かによって惨殺され、流は「自分が突然、
消えたとしても、十年後には戻る」という謎めいた言葉を残し失踪していた。
十年後の現在、流は予言通り、別荘に現れるのだが……。
全編に渡って、奈蔵によるトラウマ語りや他者の心理分析が展開されている本作。
しかし、そうした、内省的な快楽殺人鬼である奈蔵を語り手にしていること
自体が、作者のほどこした、強烈無比なミスディレクションとなっています。
本作の人間関係は、複雑に入り組み、錯綜しているため、事件の様相もいっそう、
不可解に感じられるのですが、真相は驚くほどシンプルかつエレガントなのです。
全ての謎は、本作のテーマである「母子癒着」、そして超能力
「時間跳躍」という二つの言葉に、収束していくことになります。