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夢小説・闇への逃走 他一篇 (岩波文庫)
 
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夢小説・闇への逃走 他一篇 (岩波文庫) [文庫]

シュニッツラー , Arthur Schnitzler , 池内 紀 , 武村 知子
5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

甘い官能の衝動のままに夢とも現実ともつかぬ夜のウィーンをさまよう「夢小説」のフリドリン.忍び寄る狂気の影におびえ,とめどない妄念の自己増殖に自らを失ってゆく「闇への逃走」のローベルト.内なる暗い力に引かれ,混迷の闇へと傾斜してゆく主人公を描いた晩年の中篇二作に小品「死んだガブリエル」を併収.

内容(「BOOK」データベースより)

甘い官能の衝動のままに夢とも現実ともつかぬ夜のウィーンをさまよう『夢小説』のフリドリン。忍び寄る狂気の影におびえ、とめどない妄念の自己増殖に自らを失ってゆく『闇への逃走』のローベルト。内なる暗い力に引かれ、混迷の闇へと傾斜してゆく主人公を描いた晩年の中篇二作に小品「死んだガブリエル」を併収。

登録情報

  • 文庫: 334ページ
  • 出版社: 岩波書店 (1990/11/16)
  • ISBN-10: 4003243056
  • ISBN-13: 978-4003243053
  • 発売日: 1990/11/16
  • 商品の寸法: 14.8 x 10.6 x 1.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By jabjab
形式:文庫
3話とも戯曲風に淡々と登場人物たちの会話がすすめられてゆくのですが、そこに隠された小さな兆候がもとでいつのまにか物語は破局をむかえてしまう、といった感じです。

「闇への逃走」のような悲劇は、「こんなことになる前にどうにかできなかったのか」とついつい憤りを感じてしまいますが、シュニッツラーの周到な心理描写がその結末の必然性を否応なしに認めさせます。

人間のやるせない不安や衝動を凝縮した小説だと思います。
このレビューは参考になりましたか?
9 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By くにたち蟄居日記 トップ500レビュアー VINE™ メンバー
形式:文庫
 キューブリックのアイズワイドシャットの原作ということで読んだ。同じ動機で本書を読む人は多いと思う。キューブリックの御威光としか言うほかは無い。

 読んでみて感心したのは キューブリックは実に忠実に原作をなぞっている点である。キューブリックが変更したのは舞台と時代だけで 後は ほとんど原作通りである。

 キューブリックだけが この原作であの映画は作れないとも感心した。誤解を避けるために言いますが この原作は相当の傑作であり 読んでいて 「人間の心の中の木立の深い森に迷い込んだ」という印象を強く受ける 大変彫りの深い短編である。キューブリックは これを現代に翻案するにあたり その基本線は全く崩していない。言い換えると 原作の時代であった第一次大戦前後の人間の心理が そのまま現代でも使えるという点に この原作の映画化の一つの理由があったのではないかとすら思ってしまう。夢魔的な映画であったが つまり 原作も映像を欠いていながら 十分に夢魔的な作品である。
このレビューは参考になりましたか?
形式:文庫
世紀転換期ウィーンを代表する作家シュニッツラー(1862-1931)後期の小説三篇。文化史家の言葉を借りれば、彼は、世紀末ウィーンという滅びゆく時代精神とその爛熟した文化の相貌を小説と戯曲の中に結晶化させて後世に残したと云われている。

「死んだガブリエル」(1906年作)
憂愁を帯びた夜の空気、登場する男女の関係に静かに走る緊迫感、洗練された筋立て、結末の苦み。巧みな短編。

「夢小説」(1926年作)
とある告白から萌した妻への嫉妬から、ウィーンの夜の官能に誘われるまま夢と現実のあわいを往き来する男の、夢とも現実ともつかない物語。"どこへ帰りたいとも思わない。どこへ行くよりも、このまま進む所に憧れている。・・・。行くところまで行ってみよう。死んでもいいから――"

「闇への逃走」(1931年作)
自分は嘗て妻や恋人を殺してしまったのではないか、兄が自分を狂人だと思い込んで殺しにやって来るのではないか、という強迫観念に憑かれて、遂に狂気の闇の向こう側へ墜ちてしまう男の物語。「自分は狂人ではないか」と無際限に自己確証を得ようとせずにはおれない理性が陥った狂気の深淵。以下の引用では、理性の狂気の様態を、息苦しいほど美しく描写している。"・・・、どこまでも、あてもなく、無我夢中でつきすすんだ――永遠に明けることのない蒼い夜が耳元で音をたてていた。この道なら、もう何千度となくこうして駆け抜けたことがあると彼は思った。そしてこれからも何千度となく、耳いっぱいに音を立てる蒼い夜めがけて、永劫にわたり走りつづけなければならない――"



シュニッツラーと同時代のウィーンでは、フロイトが精神分析を創始しつつあった。

"どれほど澄んだ心の中にも危険な渦を巻き起こしかねない、ひそかに奥に隠された、予期しない願望といったこと。心の中のひそかな秘密の領域であって、憧れをはっきり感じることは稀ながら、いつか夢の中で運命の風にあおられて行き着くこともある。"

"「それにどんな夢も――」ほっと吐息をついてフリドリンが言った。「決してただの夢ではない」"(以上「夢小説」)

"高地だと町にいるときよりもたくさんの夢をみる。しかも風変わりな夢をみる。さらにべつの特徴があって、人なり事物なりがそのまま現れることはなく、何かまるでかけ離れたもの、あるいは実在のものではなくて、どちらかというと概念めいたものを借りて現れる。"(「闇への逃走」)

医者でもあったシュニッツラーが、フロイトと同じ時期にかつ同じ街で、「人間の深層が夢を通じて表れる」という着想を得たという事実は、当時のウィーンが生きていた時代精神を考える上で、興味深い。

訳は、日本語の文章としてほぼ違和感なく、かつ本作品の雰囲気に相応しい。名訳。
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