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カバーイラストを夏目漱石を敬愛していると公言している吉野朔美が手がけているだけに、読者の視点に立った素敵なものになっています。
「夢十夜」をお好きな方なら、この表紙を見ると少しうれしくなると思うのです。
文字も比較的大きく、大変読みやすくなっています。
この物語をご存知のない方、また夏目漱石とは教科書と千円札以外ではあまり接したことのない方にも非常にとっつきやすい状態にされてあると思います。
その分、原文など読みなれている方にはやさしすぎるかもしれません。
物語は夢をモチーフにした奇想天外な全10話で、ロマンティックな雰囲気のあるものから、背筋が凍るような物語まで、どれも掌編なのに大変中身が濃く、「坊っちゃん」「三四郎」「こころ」などしか知らない方には意外に思われるような内容になっています。
「草枕」は「地に働けば角が立つ」という有名な出だしから始まる熊本が舞台の物語で、恋愛などより芸術のほうが先に立っている物語で、淡々としていますが味わい深いです。
この文庫化はどうも「夢十夜」だけでは文庫にならないからとりあえず「草枕」を持ってきた、と云う感じがしてしまうのですが、おまけとしては十分余りある内容です。
いつまでも(いろんな意味で)心に残る物語ばかりなので、読んだことのない方は是非読んでみてください。
私は夢十夜を学校の課題で読みました。
夢十夜というくらいなので、第1夜から第10夜まで分かれた短編小説です。
最初にこの夢十夜を評価したといわれる伊藤整曰く、漱石のあたまんなかにある夢のようなことが、写実的な文章で描かれることでより現実的になったんだとか。。。
確かに話自体は不思議なのに、文章は現実のことを書いているようだから余計に不思議な雰囲気が出ているような気がします。
文献を調べてみると、漱石が調度この頃出した手紙に、死ぬくらいの覚悟で文学に取り組みたいと思う、草枕みたいに美的世界に漬かってたんじゃダメだ、と!いう内容のものが。
第十夜で、美的世界の代表者みたいな男の子を殺しちゃう(正確には死ぬ直前)んですね、苦悩しながらも夢の世界から決別する漱石の姿が、今まで私の描いていた漱石と違って見えて、なんだか好きになりました。
この作品が漱石にとってそういう大事な転換期に出来たものだと思うとより興味深くなりません?
でもまあ、そんな難しいこと考えずに短くて面白いもんですから、楽しんでみてくださいな☆
特に夢十夜は、何と言うか不思議な感じの“詩”とでも言うべきのもので、言葉では上手くいえないけれども、今後も自分の潜在意識にとどまって、自分も気づかないうちに影響を受けていくような気がします。まさしく“夢”というべきものだと思います。そのなかで、第六夜の「彫刻は彫って作る物ではなくて、中に在るものを掘り出すことだ」というのは言いえて妙だと思いました。
草枕の「智に働けば~」の有名な書き出しはまさしく共感できるところだけども、個人的には自分は「情に掉さす」ことは今まであまり無かったかなと思います。かといって、漱石の目指した“非人情”の世界でもないし、だからといって感情豊かに皆と共感できる豊かな人生でもなかったなと、妙に自己批判してしまいました。草枕の描く映像的な世界や雰囲気も、今後の自分の潜在意識にとどまっていくだろうと思います
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