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夢を食った男たち―「スター誕生」と歌謡曲黄金の70年代 (文春文庫)
 
 

夢を食った男たち―「スター誕生」と歌謡曲黄金の70年代 (文春文庫) [文庫]

阿久 悠
5つ星のうち 4.6  レビューをすべて見る (8件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

70年代は歌謡曲の黄金時代だった。テレビ番組「スター誕生」は、百恵、淳子、昌子の「花の中三トリオ」をはじめ、数々のスターを産み出し、一大ムーブメントを巻き起こした。60年代後半からGSブームやピンク・レディー、小泉今日子らアイドル全盛時代を作り上げた阿久悠による同時代ドキュメント。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

阿久 悠
昭和12(1937)年、兵庫県生まれ。明治大学卒業。広告代理店勤務を経て、作詞、小説、エッセイなどの執筆活動に。尾崎紀世彦「また逢う日まで」、ピンク・レディー「UFO」、森昌子「せんせい」など数々のヒット曲を作詞し、「日本レコード大賞」「日本歌謡大賞」「日本作詩大賞」など多数受賞。平成19(2007)年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 388ページ
  • 出版社: 文藝春秋 (2007/12/6)
  • ISBN-10: 416732105X
  • ISBN-13: 978-4167321055
  • 発売日: 2007/12/6
  • 商品の寸法: 15.2 x 11 x 2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.6  レビューをすべて見る (8件のカスタマーレビュー)
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形式:文庫
 章立ては時系列ではないが、GSブームから、ナベプロ・日テレ戦争、スター誕生の時代、ピンク・レディーブームまでを、“主観のドキュメント”、“ワン・カメラのドキュメントとして書いたもの”。まさに“ナベプロ帝国斜陽化以降の歌謡界をワンカメで押さえることが出来るのはこの人だけ”っていう阿久悠ならではの当事者ドキュメントである。
 1992年夏、バルセロナ・オリンピックでアイドルとなった岩崎恭子と、かつてのアイドルで当時統一教会の広告塔として叩かれまくっっていた桜田淳子の対比が導入部となっている。あの時点からですら、すでに15年近くが経過していることに唖然とし、“歌謡曲の時代”あるいは“昭和”というものがすでにとっくに終焉を迎えた存在であることにあらためて気付かされる。
 阿久悠は書く。「1970年代には、まだサクセスという言葉が、光り輝く幻想としてあった」「1980年代も半ばを過ぎると、サクセスは幻想でなくなり、計画にすぎなくなる」。確かにその通りだろう。現在がその延長線上にあることも。ただ、サクセス幻想とかヒーロー願望は人々の心の底に燻ぶっていて、オウムとかヒルズ族とか、歪んだ形で表出する。大体、大衆から分衆、小衆の時代、あるいは大きな物語から小さな物語の時代なんて言うけど、ほんとに、そんな進化論的に、時代は変節したんだろうか。特に、それはGSもスタ誕もPLも知らない平成の子供たちに問いかけてみたいし、そういうことでは「懐かしむつもりはない。情熱とか狂気とかが、何故か日常的に存在し、それが夢につながっていた時代は、検証の価値がある」という本書の意味は、初版出版後10数年経った今でも変わらないのかもしれない。
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6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
音楽産業の歴史について調べる必要があり、手にしてみたが、
想像以上に面白かった。
私は「スター誕生!」が一世を風靡した時代に生まれていなかったので、
阿久悠の印象は「日本一の売上枚数を誇る作詞家」というぐらいの認識しかなかったが、
本書を読むと、作詞家というよりか、
めちゃくちゃ先見性のあるプロデューサーそのものである。
考えてみれば、秋本康もそうだが、
音楽コンテンツという不確実性の高いビジネスにおいて、
単に作詞をやっただけで、これだけのヒットを連発できないだろう。

特に、ピンクレディーがヒットするまでのプロセスは
読んでいて固唾をのむ。
ヒットを作るというのは、
・世間を巻き込み、自分たちが予想もできないような
アーティストのイメージを作っていくことにあり、
・世間が作ったイメージを、制作サイドでまた新たに覆していく螺旋階段のようなプロセス
ということや、
・こうしたイメージを作り、見届けていくためにも
同じアーティストに対して最低3回連続で作詞を請け負えなければ手がけない、
という仕事の仕方など、彼の仕事術は、
現在でも参考になると思う(もちろん、そのまま真似ることはできないが)。

そして、こうした阿久悠という人材は
もと広告代理店の企画マンというバックグラウンドがあった。
1960年代までの音楽業界は、専属作家制といって、
売れっ子作家をレコード会社の社員として扱っていたが、
1960年初頭からモノクロテレビ、スタ誕が生まれる直前の70年からはカラーテレビという
新たなメディアが登場することで、
阿久悠のようなフリー作家が活躍することになった。
こうした従来の仕組みと新たな仕組みが揺れ動く中で、
業界に風穴をあけるには「外からきた人間」というのも必須の条件だったのかもしれない。

このように、一仕事人としての阿久悠の仕事っぷりだけでなく、
俯瞰的な流れの中で本書を読むと、学びが多い一冊であろう。
このレビューは参考になりましたか?
11 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By TaroTaro トップ500レビュアー
形式:文庫
93年毎日新聞社から単行本として刊行された作品の文庫版。60年代のGSブーム、スター誕生の誕生から全盛期に至るまでを、当事者である阿久悠自身の視点で描いたドキュメント。アイドルの卵がスター誕生に出演、その後脚光を浴びるまでの彼と彼女達のかかわりなどを、彼女達の若かりし頃を思い出しながら懐かしく読むことができた。

しかし、全編を通じてもっとも印象に残ったのは、そういったことではなく、阿久悠のもつ暗さ、言いかえれば負のエネルギーだった。

阿久悠は、間違いなく昭和を代表する大作詞家の一人だ。そして彼は芸能界において“権力”を持ち得た人物の一人のはずだ。だが、この作品の行間から漂ってくる匂いは、認められたいと思い続けながらも果たせず不満や鬱屈を抱えたままの売れない作詞家のそれだ。彼が時代の寵児となったときを描いた部分でさえ、その匂いは文章や行間から消えることはなかった。

印象的な箇所があった。彼は70年代前半に“その気になって”から3年連続でレコード対象の作詞賞の受賞を逃してしまったのだが、一年目の受賞者である「なかにし礼」についてはその仕事ぶりを認め、しょうがないと諦めるのだが、二、三年目の受賞者に対しては名前と曲名だけは挙げるもののコメントはまったくしていない(p214)。

真意はわからないが、わたしはそれを単純な阿久悠の負けず嫌いからでなく、“なんでこの詞にオレの詞が負けたんだ(負けなければいけないんだ)”という鬱屈した不満がこの作品の執筆時に甦り(もしかしたら20年間忘れることなかったのかもしれないが)、こういった文章を書かせたのだと解釈した。

才能を持ち、芸能界で輝きを放つ人物は多くいても、その輝きを持続できるのは選ばれたほんの一握りの人物だけだ。阿久悠は間違いないその一人だが、その源泉となったのは才能だけではなく、この負のエネルギーだったのかもしれない。
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