「夢みる科学」の著者の佐治晴夫先生は現在は鈴鹿短期大学の学長をなさっています。専攻は天文学や数学です。
「
般若心経物語」という本の中に、佐治先生の著書「宇宙の不思議」の中の文章が引用されています。また「
般若心経物語」には金子みすゞさんの詩も引用されています。
その金子みすゞさんの詩を私が初めて知ったのは佐治先生の講演をお聞きした時でした。1995年に正眼短期大学で大学設立40周年の行事の中での講演でした。(この当時、金子みすゞさんはほとんど世に知られていませんでした。)
天文学のお話というよりも金子みすゞさんの詩を軸にして、宇宙と美しいものを語るというもので素晴らしかったです。ずっと泣きながら聴いていました。
この「夢みる科学」もその素晴らしさは変わりません。この本にも金子みすゞさんの詩はいくつも登場します。
この本の元の文章は読売新聞に連載されていたもので、いろんなお話が出てきます。
佐治先生は望遠鏡を覗いてもらって《真昼の星》をよく人々に見せています。望遠鏡で光を集めると、真昼の星も見えるのです。そして見た人はその美しさに一様に感嘆の声をあげます。その部分の文章を引用しましょう。
***
さて、私の経験からいえば、”真昼の星”を見た人のほとんどが、まず驚きの声をあげ、それからだまりこくってしまいます。時には、望遠鏡のレンズを涙で曇らせてしまう人もいます。
***
もう一つ引用しましょう。
***
ところで、ハンセン病療養所のひとつ、瀬戸内海に浮かぶ長島・愛生園に天文台があったことを、国立天文台の渡部潤一さんの最近の話から知りました。四畳くらいの小さな天文台だったようですが、社会から隔離され、差別に苦しんでいた人々は、どういう想いで星を見ていたのでしょうか。その建設と現地での指導にあたっていたのが、世界に誇る彗星探索家の故・本田實(みのる)氏だったというのです。
じつは、私が中学生の頃の夏休みに、倉敷まで本田氏を訪ねて行ったことがあります。そのとき、「星は、すべての人に、わけへだてなく、同じように姿を見せてくれるから好きです」と野良着のまま笑顔で話しておられたのを覚えています。建設はちょうどその頃のことだったようです。宇宙の研究は、決して浮世離れしたものではないという本田氏の言葉は、美しい夏の思い出として、私の心の中できらきら光っています。
***
「夢みる科学」は、このような素晴らしいお話が沢山登場する素晴らしい本です。
ちなみに、最初に「
般若心経物語」のことを書いたのは、この本が「夢みる科学」と同じように《本当に大切なもの》を書いているもので、佐治先生や、金子みすずさん、宮澤賢治といった方々に共通するもの、《きれいな青ぞらとすきとほつた風》が作品の中に流れていて、大きな感動があったからです。佐治先生の作品に感動した方々にぜひ読んでほしいと思ったからです。