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最も参考になったカスタマーレビュー
3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
幻想の中に脈動する圧倒的な現実感,
By 悠史郎 (東京都豊島区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 夢の島 (ハードカバー)
中年の主人公が自らの無意識に導かれるように東京の埋め立て地を訪れる。そこは廃棄物が集積され、腐食し、発酵し、そして荒々しい自然の姿を取り戻している。エントロピーの増大の流れの中で反エントロピーの秩序によって出現した小島。その鮮やかなパラドクス。主人公はそこに都市の発展と荒廃、生命体としての都市の生死を透視する。まるで荒漠とした埋め立て地に轟々と風が吹き荒れているような、虚無感と不思議な高揚感が絡み合った傑作。またこの時期(八十年代中期)の日野啓三の小説は、「都市幻想小説」と一般的には括られているようだが、しかしどんなに現実をなぞってもリアリティーの希薄な小説が多い中、この作品を覆った幻想性の中には、圧倒的な、ひりつくような現実感がみなぎっている。きっとここに描かれた想念こそが、氏にとっては日常という虚妄の向こうのまぎれもない現実なのだろう。
5つ星のうち 4.0
なんとなくベルメールを思わせる,
By 存尾 - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 夢の島 (ハードカバー)
シュールレアリスムというと、まずダリやマグリットなど奇想を描いた作品を思い浮かべるのではないだろうか。これらの画家は軟らかい時計や空中に浮かぶ岩といったあり得ない世界を視覚化することで、一般的な意味での現実とは異なるもう一つの「現実」を表出する。日野啓三もシュールレアリスムの系譜に属していることは間違いないが、そのようないわばシュールレアリスムの古典とも言える画家たちよりも、本作はハンス・ベルメールを想起させられた。マネキンが重要な要素になっているところももちろん共通項だが、ベルメールの人形もむしろ人形それ自体の芸術性というより、そのセッティングによって不気味さを出していると思われる。まあ、ベルメールのようなエロティックなところはあまりないのだが、それでも女性ライダーなど、セクシーな感じはある。 人形、人工性、死、腐敗といった要素を組み合わせて不思議で異様な世界を造っているところはすばらしいが、結末で明確になるミステリ的な発想は、ありきたりなところが少々不満だった。
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