私は最初この本を夢の分析に関する本として読み始めたわけですが、この本の中心的なテーマは、ズバリ近代論と言えます。模索の方向は古代とも近代ともポストモダンとも異なる意識のあり方を探る、ありていに言えば近代を超克する意識のありようについて夢の分析を通して考えること、と言えましょうか。この本で扱われるのは、著者がカウンセラーとして対応したシャーマン的な資質を持ったある女性(原因不明の頭痛に悩まされている)の一群の夢です。当初、古代的な意識を体現するタイプの夢を見ていたその女性は、カウンセリングを重ねるうちに、徐々に近代的意識を体現するタイプの夢を見るようになってきます。さらにカウンセリングを重ねていくと、彼女の夢は古代的なものと近代的なものとがお互いを排除せずに混然一体となったものとなり、その時点で彼女の頭痛は劇的に回復します。このような過程を、実際の夢の分析と、人類学や哲学の幅広い知識を織り交ぜながら解説していきます。臨床心理学が専門の著者ですが、非常に幅広い知識をお持ちです。扱っているテーマも今日的に重要なもので、なかなかに野心的な作品だと思いました。夢の分析からこのようなパースペクティブが得られるとは。おそらく、タイトルだけからはこのような内容は想像できないでしょう(講談社はもっと本のタイトルを工夫すべきだったような・・・)。