ウィリー・ウォンカ(ジーン・ワイルダー)は、天才的発想で、数々の革新
的お菓子を作り、世界中の子どもを喜ばせている製菓会社の社長。か
つて、ライバル会社が、ウォンカ製品の作り方を盗んでから、ウォンカは
心を閉ざし、外界との接触を絶って工場を稼働していた。そんなある日、
ウォンカは、自社のチョコレートに5枚の金のチケットを同封し、それを当
てた5名を自分の工場に招待すると発表し、世界中が大騒ぎとなる…。
ロアルド・ダールの児童書の傑作『
チョコレート工場の秘密 (ロアルド・ダールコレクション 2)』
の映画化作品。ティム・バートン版『
チャーリーとチョコレート工場 [Blu-ray]』
が、彼の毒ある美意識やウォンカと父親の確執などを盛り込んだのに
対し、本作は、かなり原作に忠実に作られている印象だ(リスたちが働
く場面は削除されたが)。にもかかわらず、脚本も担当した原作者のダ
ールは、『
オーメン [Blu-ray]』などで有名なデヴィッド・セルツァーの書
き直しが気に入らず、完成した作品を観ようとしなかったという話も伝
えられている。日本劇場未公開作。
原作を読んだ者であれば、誰もが、各々のウォンカのお菓子工場を想
像すると思うが、本作では、各人の想像を壊すことなく、その夢の工場
内をフル・スケールで現出させてくれたことが何より素晴らしい。文字に
よる想像も楽しいが、やはり具体的な映像の力は、圧倒的だ。色とりど
りのお菓子で出来た植物(実際に、かなりのものが食べられる素材で作
られたそうだ)やチョコレートの滝と川など…、まさに、すべての子どもの
夢の実現。美術担当が、『
海底2万マイル [DVD]』のハーパー・ゴフだけ
あって、子どもの無邪気な夢を形にすることはお手のものだったのだろ
う。画面から、出来たてのお菓子の温かく、甘い香りが漂ってくるかのよ
うだ。スチュアート監督は、主人公チャーリーと同じ視点で、子どもの素
直な驚きと楽しみを一緒に体感できるような演出で全く飽きさせない。
極彩色のメルヘンの濃密な世界がここにある。
ウォンカ役は、さまざまな俳優へのオファーの後、最終的にワイルダー
に落ち着いたということだが、子どもの心を持ったまま大人になったかの
ようなワイルダーにぴったりだ。ワイルダーの瞳は、どういうわけか、い
つも泣いた後のように若干潤んでいるが、クローズ・アップで、その潤ん
だ瞳のワイルダーの顔を観る度に、ウォンカという複雑な人物の哀愁と
孤独を感じさせてくれる。可笑しさと同時に、どこか暗さがつきまとう深
みあるウォンカ像が素晴らしい。どうして、ウォンカはひとり大きな工場
に籠り、お菓子を作るようになったのか、という彼の過去を知りたいとい
う気持ちが掻き立てられる演技なのだ。
本DVDは、HDテレシネ、レストアされたマスターを使用したもの。ディ
テール表現が甘い部分もあるが、全体的に、(DVDに比べたら)艶やか
な色彩が楽しめる画質だ。音声も明瞭(5.1chサラウンド及び5.1chドル
ビーTrue HD)で、DVDには未収録だった日本語吹替えも初収録。特
典には、子役たち5人のコメンタリー、ドキュメンタリー(約30分)、シング・
アロング(カラオケ)、予告編が収録。ただし、すべてSD画質。