ミステリとしての色彩は薄く、むしろ恋愛小説の色濃い作品だと
思うけれど、他の作品同様、悲惨を悲惨のままで終わらせず希望
の光を残す読後感を与えてくれるので、著者高橋和明(+阪上仁
志)氏の作品は安心して読める。
“超能力”を扱うと、話の展開は楽になる反面、作品としては大
きなハンデを背負ってしまう。
読み手の方が『どうせ何でもありなんでしょう』という気持ちに
なりがちだからだ。
そこで、“超能力”を扱った作品は必ず何らかのハンデを超能力
者やその周辺に設ける事になる。
この物語では、心理カウンセラーという立場だったり女としての
嫉妬だったり、人間としての心の弱さだったりして都合よくは行
かない状況を作り上げ読者の共感を得ようとしている。
それは上手く成功して、しばしば現実の世界における男女のもど
かしさやじれったさに似た感覚を読者は感じる。
逆に、超能力やカウンセラーという特殊な能力・立場故に相手の
心を読み過ぎ、考え過ぎて主人公の心は迷走し、命の危険にさら
された場面になって初めて『転移なんかを気にしないで、大好き
な彼の胸にすがればよかった』という考えに至る。
現実社会でも往々にしてある心の動き、後悔の仕方ではなかろうか。
“超能力”を扱っていながら、とてもリアルに登場人物たちの心
が動いていくのが見事だと思う。