茅島氏の主治医、聖司の切ない恋のお話です。
同人誌で読んだのはもう10年以上昔になります。
何度も増刷されて、続編がぱらぱら出たり、総集編に入ったり、商業でも出て。
今回の文庫化にあたり、また新たなイラストで読んでみましたが、ぜんぜんストーリーは色あせていない。
聖司は遠野作品の主要人物としてはかなり弱い、儚い存在で、たとえば情熱シリーズの佳人のような強さは持ち合わせていないし、茅島氏のような独特な存在感もなく、月より密かにまたたく明度の低い星のような人。
天使のような美貌、肉体は淫らに熟れているけれど、内面はとても普通で、ちょっとずるくて臆病な人。
共感はできないのだけど、誰か彼を見つけてあげて、愛してあげて、と願ってしまう薄倖の人。
とにかく、友臣に宝物のように愛される日々が、甘くて甘くて劇甘です。
兄の理不尽な愛情に翻弄される日々は少し痛くてつらいけれど、その後のラブラブとの糖度の差が引き立つので、ぜひご賞味頂きたいところ。
いや、正直に言っちゃうと、フランス人形のような聖司がよってたかってあれやこれやされちゃうのには嗜虐心が満たされるというか、それはそれで思いっきり楽しんでしまうのでした。
壊れたようにベッドに横たわってきれいなガラス玉みたいに目がうつろ〜になってるとか、そそられます。
ついいじめちゃうお兄ちゃんの気持ちもそれはもうよくわかってしまう・・・
書き下ろし短編「サラセン式庭園と紳士」は、聖司がオーバーワークで肺炎に倒れ、某紳士がお見舞いに訪れる小話。
なんてことないお話だけど、茅島氏ファンならこのためだけに買うのもありかなと思います。
ちなみに、こんな短い話だというのに、友臣は「あんたらいくつ?!」と突っ込みたくなるほど、聖司にベタアマです。
本人たちは節度あるつもりだから始末に終えない(苦笑)