第1話の「ハクセンキタン」(本ではむつかしい漢字を使っています)がいいです。
幽霊が現れるのではないかと、びくびくしながら歩く夜の道の怖さを、みごとな描写力で描いてみせます。
「化物が出るからこわいのではなく、怖く描くから怖いのだ」とは、最近読んだ怪談の書き方入門の書にあった言葉です。
「ハクセンキタン」はこの絶好の見本となるでしょう。
ただし、残念なことに、ラストが、です。
視点が変わるのです。
人称も1人称から3人称に変わります。
ライトノベルでよく見られる手法ですが、この作品に限っては、成功しているとはいいがたいです。
「あれ、もしかして、人称が変わったのかなあ」ととまどっているうちに、小説が終わってしまって、気がそがれた分、怖さも減少してしまいました。
1人称の部分だけで終わってもよかったのではないでしょうか。
第2話は「ツロイキタン」。
これもよくできた怪談でした。
問題は第3話の「ツギキキタン」です。
これが文庫化にあたっての書き下ろしだと思いますが、まったく浮いてしまっているのです。
前半は私小説風の雰囲気で、どちらかというと大人向きの小説です。後半はホラーではあるものの、前の2作とは違い、グロで怖がらせようとしています。
この第3話が浮いてしまっているために、本全体の評価が低くなってしまいました。