映画が始まってすぐに駅の階段を登る群集の俯瞰映像(まるで「戦艦ポチョムキン」のオデッサ階段を髣髴させる)が映し出され、本作のテーマであるジャズ調のスキャットが流れる。もうこれだけでググッと作品に惹きこまれ最高!
ストーリーは謎めいた中年男性(レオン・ニェムチック)と別れた男に追われる女(ルチーナ・ヴィニエッカ)が夜行列車で同室となる。この二人を中心に女を追う青年(ズビグニエフ・チブルフスキー)や隣室の中年男性に言い寄る若妻や同じ車両の牧師、強制収容所経験のある男などを絡めた人間模様を自分の妻を殺した犯人の逃亡劇を絡めてミステリアスに描く。特に同室となった男女の素性や関係の変化、同室となった背景がひも解かれていくところは何ともサスペンス的で素晴らしい。
そして、この作品のもうひとつの魅力は凝った映像。列車の窓ガラスに写る女性の表情や姿、部屋の鏡に写る女の姿、殺人犯に群がる人々、列車の廊下に立つ人々、そしてラストの人のいなくなった夜行列車の窓からの情景を写すシーンなどゾクッとする魅力的な映像が満載。これにシネ・ジャズが絡んでミステリアスな魅力を増幅する。そんな演出が最高。
1957年の「死刑台のエレベータ」で生まれたシネ・ジャズの世界が1959年ポーランドのこの作品にもすでに十分活かされているところは凄い(ポランスキー監督の「水の中のナイフ」もシネ・ジャズが用いられている)。
そして、配役も魅力的。主人公の中年男性は「水の中のナイフ」にも出演するベテラン「レオン・ニェムチック」。同室の女は「尼僧ヨアンナ」のルチーナ・ヴィニエッカ。女を追う青年に「灰とダイアモンド」のズビグニエフ・チブルフスキーと役者も揃っている。
とにかく、物語の展開、映像、音楽、役者と四拍子揃ったイェジー・カワレロヴィッチの傑作のDVD化はうれしい限り。同監督の「影」のDVD化も望む。