Christopher が入り乱れる刺激を理解する方法はただ1つ、抽象的なパターンに当てはめることだ(「黄色い車が4台並んだ日は黒い日だ。誰にも口をきかないで読みかけの本の上に座って何も食べないで危ないことをしない日だ」)。想像力を欠く観察が、一種詩的な感性と辛辣な人物描写に拍車をかける。Christopher は「これは笑える本じゃない。ぼくはジョークは言えない。ジョークはわからないから」と言い張るが、この小説は感動的で皮肉なユーモアにあふれている。その結果、独特の語り口が胸に迫る、目を見張るような作品になっている。
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7 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
自閉症という果てしない宇宙。,
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レビュー対象商品: 夜中に犬に起こった奇妙な事件 (ハリネズミの本箱) (単行本)
ハリネズミの本箱の一冊である本書の語り手は“アスペルガー症候群”いわゆる自閉症のクルストファーという十五歳の少年です。養護学校の先生のすすめで本を書くことになった彼は、大のホームズファンということもあって、近所で殺された飼い犬の犯人捜しをミステリ小説として執筆しています。しかし、本書はミステリではありません。事件の犯人捜しという骨子はミステリとして残っているのですが、本書の本領はクリストファーという自閉症の少年が、自らのことを自分の言葉で語るというところにあります。彼の感じる世界、考え方、受けとめ方、あらゆることがはじめて自閉症というものに接するぼくには驚きの連続でした。瞬時にすべての情景を記憶にとどめてしまい、あらゆることに秩序を求め系統づけしてしまう。数学と物理に関しては天才的な能力を発揮し基数の三乗を千桁まで暗算することなど朝飯前。しかし、彼の世界は内的には底知れぬほど果てしなく広いのに、対外的にはおそろしく狭いものになってしまう。小学生にでもできるような、たとえば駅にいって切符を買うというような当たり前のことが、彼にとってはとてつもなく困難なことになってしまう。このアンバランスな状態が、クリストファー自身によって語られることで漠然としてではなく、身にしみる現実となってこちらにも伝わってきます。ぼくは、クリストファーから多くのことを教わりました。それにしてもすごい世界だ。そして、本書のぎこちない世界をリアルに訳しているのが小尾芙佐さん。アルジャーノンの名訳を彷彿とさせるいい訳です。
17 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
秩序と混沌,
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レビュー対象商品: 夜中に犬に起こった奇妙な事件 (新書)
クリストファー・ブーン。15歳。彼の嫌いなものは黄色いもの、茶色いもの、食べ物どうしがお皿の上で触れ合っている状態、人ごみ、知らない人との会話、大きな物音、行ったことのない場所や見たことがないもの・・・。これらはときに彼にパニックを起こさせる。彼は自閉症児だ。しかし彼の内面は実に豊かでみずみずしい。焦がれても持てないだろう能力を彼はたくさん持っている。宇宙のしくみや、自然の法則、数学やパズルは大の得意だ。近所の飼い犬が園芸用のフォークで串刺しにされて殺されたのを発見した彼は、シャーロック・ホームズのように事件を解決しようと捜査を始める。その過程を本にして書き記すことにした。 探偵を気取って捜査を始めたものの、事件は意外な方向に転がり始め、予想だにしなかったことが我が身に降りかかってくる。それらは彼が一番苦手とするところの混沌である。パニックにとらわれそうになりながら、混沌の中に秩序を求めて家を出るクリストファー。こうして彼の小さな、だけどとっても勇気のいる冒険が始まった。 ミステリの形を取りつつも、ひとりの少年の精神世界をこれほどまでに丁寧に描いてあることに感動する。随所に出てくる図式や数式や、イラストなどを見れば彼がどのように世界を見ているかが一目でわかる。そして彼が見ているものが、いかに混沌として複雑で、どんなにか彼を不安にしているかも理解できる。彼なりに現実と折り合いをつけ、進む道を切り拓いていくさまに勇気をもらった。死んだ犬に始まり、生きている子犬で終わる爽やかな物語です。
5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
翻訳もすばらしい,
By 本っていいですね (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 夜中に犬に起こった奇妙な事件 (ハリネズミの本箱) (単行本)
本の内容自体もすばらしいと思いますが、翻訳もさすがだと思いました。人とのコミュニケーションに障害を持つクリストファー君の態度・口調がうまく日本語になじむように訳されているように感じました。(偉そうな言い方で申し訳ないです)敬語とぞんざいな口調を微妙・絶妙に混ぜていらっしゃるあたりが面白く、楽しく読ませていただきました。
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