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11 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
短編集故に、のめり込む,
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レビュー対象商品: 夜を着る (単行本)
八篇の短編集だが、前の方に配列されている作品を読んだ時点では、まだ、強く惹かれるものを感じなかった。描こうとしているテーマそのものを掴みきれず、物語の展開の意外性ばかりを、当初は、強く感じた。 ところが、収録されている作品を連続して読んでいるうちに、時を忘れて、のめり込んだ。 作品群の持つ、独特な喪失感と、哀愁に、深く酔いしれる様になった。 それは、三番目に配置されている「ヒッチハイク」あたりからだ。 四番目に配置されている「終電は一時七分」はとどめだ。 そこから先は、むさぼる様に、読み進んだ。 これらの作品群は、短編集として、まとめて示されると、大変面白い。 手に馴染む、ソフトカバー本で、添付されている白黒写真が、雰囲気を盛り上げる。 全作品を読了してみると、それぞれの作品が、帰納的に、一定のテーマを表現している様に感じる。 それは、あまり爽快なものではないが、読者を夢中にさせる、魅力を放っている。 本書は、一冊の短編集という単位で、大きな読み応えを感じる。
5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
小説ってやっぱりいいなぁ,
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レビュー対象商品: 夜を着る (単行本)
直木賞受賞作「切羽」でファンになった著者の短編集は、期待を裏切りませんでした。小説でしか描けない世界を描いて秀逸で、ああ、小説ってやっぱいいよなぁ、と感じ入りました。奇抜なアイデアやプロット、幼稚な観念性だけを頼りに、雑駁な文章で書かれた作品が多い中で、光っています。終電は1時七分、島の思い出、よそのひとの夏、が特にすばらしく、2度読み返しました。 島の思い出、よそのひとの夏は、私小説的です。母親の描き方に、うなりました。もしかして著者は、すぐれた私小説作家になれる人かも、という印象を強く持ちました。 これからは著者の新刊は必ず読もうと思います。 「切羽」は、なぜ直木賞だったんだろう。芥川賞でもいいのに。 普段小説を読まない人で、芥川賞だけは話題として読む、という人けっこういます。そうした人を小説好きの読者にする機会を、みすみす逃すような作品の受賞が多すぎます。
5つ星のうち 5.0
違和感を描いた傑作短編集,
By むにまろ "むにまろ" (東京) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 夜を着る (文春文庫) (文庫)
井上荒野の傑作短篇集だと思います。旅に出ると、見慣れた人に対して急に違和感(作者は「よそ」と表現)を感じたりするものですが、その感覚をいろいろなバリエーションで疑似体験させてくれて、前編を通して読むと変奏曲のようです。ドライブ中のカップルが険悪になって行く「アナーキー」は傑作!旅をきっかけに壊れるカップルというのはこういう感じなんじゃないでしょうか。彼の方の気持ちも彼女の方の気持ちもよく分かって、井上荒野にはまるきっかけとなりました。以前、いろいろな作家の短篇を集めた本を読んだのですが、この作品だけが印象に残り、当時はまだ今ほど有名ではなかった井上荒野の本を探しては読むようになりました。 そして「映画的な子供」は十代のころの急にさーっと変化する感覚を思い出させてくれます。潔癖というのか思い切りがいいというのか、本当に懐かしい感覚です。逆に、「夜を着る」は意表を突かれるが夫婦だとやはりこうなるだろうなあと、この年齢になってこその感覚で実感させられます。 巻末にある作者本人によるあとがきや松山巌の解説も面白かったです。
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