欧米の建築を中心に採光と照明について、その実態をたどりながら効果について語られている。タイトルから「光害」に悩む都市景観について論じる内容かと思っていたが、良い意味で裏切られた。
冒頭、「暗さのもたらすもの」としてブリューゲルの有名な絵を元に、ヨーロッパの天候・空の暗さ、そして日本の空の明るさを論じているが、ここで一気に引き込まれた。そして、そこから欧米における建築と採光を日本のそれと比較する「暗さをたずねて」という中盤に展開していくところは楽しく読めた。
筆者は建築が専門であるが、眼の働きや人種による眼の解剖学的な違い、気象・気候が及ぼす環境の差異などの説明も適宜行われて、理解しやすい。
残念なのは図版の少なさである。特に欧州の教会と日本の寺の礼堂を比較するところでは同一条件で撮影した写真をもっと掲載して欲しかった。特に、権利の関係なのか、国内の建造物についてはまったく写真がない。著者によるランク付けだけでは想像が十分行き届かないので、改版時にぜひ考慮して欲しい。
終盤、「現代に暗さをつくる」での室内照明の変遷については、その指摘に頷くことしきりだった。インテリアに興味のある方はぜひ、一読されたい。
「日本人は暗さの価値がわからなくなった」という指摘と、「暗さは人にものを考えさせるのだ」という言葉を本書に見いだし、おもわず白い蛍光灯を見上げてしまった。