上下巻を読んだ感想は、「多くの人にとってはつまらないし、わかりにくいかもしれない」という感じです。フィッツジェラルドの有名な代表作である「グレート・ギャッツビー」に比べると華がなくて理解しにくい作品だと思います。ただ、まさに酒のように後から胸を熱くさせるような魅力があります。
下巻に入ってから忙しなく話が進みますが、上巻はそのための序曲という感じで多少の我慢が必要かもしれません。もしかしたら上巻は読まずに下巻だけでも一つの作品として形を成すかもしれません。ただ、この作品はその序曲がやっと後半で効果を発揮します。つまり、深く理解するためには上巻の「しこみ」が必要不可欠なのです。
作品の内容ですが、「フィッツジェラルドの自伝的な長編」と呼ばれています。
有能な医者である青年がその才能を一人の美しい女のために使い、本来ならば勝ち得るべき名声を得られずに散っていく様が描かれています。
フィッツジェラルドは美妻ゼルダのために作家として成功し、彼女のせいで破滅していったと言われていますが、まさにその心中が描かれているかのようでした。
上巻では主人公の青年ディックがいかに人間的に素晴らしく、愛妻ニコルとの生活が穏やかで満ち足りたものだということ、しかし波乱への種まかれていることが情緒的に描かれています。
読み終わった後の余韻の温かさと穏やかさは、閉店間際のバーのカウンターで一人でグラスを傾けているような愛されるべき孤独や、秘密を胸にしまっておくような感じに似ています。
抽象的でわかりにくいかもしれませんが、そんな感じです。