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23 人中、23人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
10年後の改訂版,
By liquidfish (Japan) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 夜の言葉―ファンタジー・SF論 (岩波現代文庫) (文庫)
収録されている文章自体は、特にひとつの本として出版するために書かれたのではなく、色々な場に向けて書かれた原稿を集めたものです。ひとつずつがしっかりまとまった文章なので、どの章から読んでもいいし、読む人ごとに、あるいは何度か読む度に印象に残る部分は違ってくると思います。それにしても、どこを取ってもぼんやり読み飛ばせるような言葉はない、と感じました。 この本は"ファンタジー・SF論"となっていますが、これらのごく一部の分野のことに限ったマニアックな話ではありません。そうではなくその逆、世界を外へと押し広げ、自身の魂の奥へと深めていく動きです。 また、この本が最初にアメリカで出版されたのが1979年なのですが、そのちょうど10年後の1989年に、著者によって大幅に改訂が加えられました(序文より)。言葉を少し変えたり、削ったり、というのではなく、文章は元のままに、10年後の視点で10年前の文章に補注を付けてあります。 あれは間違っていたから、と言って消してしまうのではなく、このときこうだったのを今はこう思っています、というように。変化することは恥じることではない、自分と向き合い世界を広げてゆこう…という彼女の姿勢は、この「改訂」に最もよく現れているのかもしれない。
29 人中、28人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
「心の旅」を表現する小説,
By
レビュー対象商品: 夜の言葉―ファンタジー・SF論 (岩波現代文庫) (文庫)
「夜の言葉」と言うタイトル自体が、作者のファンタジーに対する考え方を実に良く表しています。作者は、ファンタジーについて、人間の「光」と「闇」の部分を表現しなければいけないと主張します。ファンタジーと言う「夢の世界」において、「善」と「悪」と言う枠組みだけではダメだと言っているのです。つまりは、「人間」そのものを表現しなければと言っているのでしょう。主人公が、「光」と「闇」の部分を旅し、螺旋状に徐々に「人間」として完成されてゆく「心の旅」を表現すべきだと言っています。 彼女の作品「ゲド戦記」の第一巻「影との戦い」は、まさにそうでした。この作品は、ゲドが「影」探しの旅に出て、それと一体となり、「人間」としての自分を取り戻す旅でした。 又、「指輪物語」にも言及していて、この作品はフロドを中心に4人にその「光」と「闇」を分担させて表現していると分析しています。そのために、フロドが最後では任務を全うできないのだとも言っています。 そうしたファンタジー以外にも、SFの必要条件や、神話の分析とファンタジーやSFとの関係、彼女の常に持っているフェミニズムと言うテーマにも言及しています。 評論と言うことで硬くて読みにくい本と言うイメージがありますが、この本は各地での講演をベースに纏められた本なので、非常に読みやすく出来ています。ファンタジーやSFなどに興味のある人には、必読の本かと思います。
5つ星のうち 5.0
想像力が暴き出してしまう内面のジェンダーの壁,
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レビュー対象商品: 夜の言葉―ファンタジー・SF論 (岩波現代文庫) (文庫)
改訂をするまでもなく、彼女は、自分の想像力の中にある奇妙な男性原理に気づいてしまっている。女になんか想像力は無い、だが、男は想像力などにかまけているものではない、というのが、それだ。SFやファンタジーを語るヴィクトリア朝のキモオタ男どものゲットー評定に救いがたい違和感を抱きながら、深い夜の底へと探検の旅を続けるのだが、その彼女自身の言葉が、想像が、すでにいつのまにか男性原理に浸食されてしまっている。自分ではない他者としての男の影としての女であることから、どうにも逃れられない。表面の言葉使いを改訂したくらいでは、なにも払拭されていない。グウィンは、男性原理を批判すればするほど、自分の中に染みついた男性原理を用いざるをえなくなる。彼女自身が、想像力を男性原理的な探検の旅とみなしてしまっている範型から、それは必然的に帰結する。それが、この作者の「想像力」とやらの自滅的な宿命だろう。 奇しくもこの本の最初の版が出た1879年、映画で『エイリアン』が男のリドリー・スコットによって作られ、女のSFが幕を開ける。彼はまた、1991年には、かの『テルマ&ルイーズ』を撮っている。グウィンは、エレンとエイリアンとの血なまぐさい生き残りと世代交代の女の戦いをどう見たのだろうか。エレンは探検の旅などしない。自分の世界、自分の身体に割り込んでくる侵入者を許さないだけだ。『ターミネーター』(1984)のサラはどうだ? そこでは想像力など、むしろ妄想癖の精神病患者扱いだ。だが、自分の予言された死を知りながら、現実の戦いを繰り広げる。 グウィンという大衆文学の端境期の女流作家の思いと苦悶、という意味では、とても興味深い。だが、彼女が、ヴィクトリア朝の文壇に抗すれば抗するほど、しょせん内面的にも「女流」であったということを認めざるをえないパラドクスは痛ましい。夜の言葉、というタイトルは、女の言葉、男の日の世界から追われた者の言葉、という意味でもあろう。
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