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54 人中、47人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
この世界と和解できない人へ,
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レビュー対象商品: 夜の果てへの旅〈上〉 (中公文庫) (文庫)
絶望の果てには奇妙な快楽が潜んでいる。それに気づいている人は少なくないのだが、 それを追求するだけの勇気と機会と才能を持った人は極僅かしかいない。 セリーヌは、幸か不幸か、その全てに恵まれていた。 この『夜の果てへの旅』には特に気に入った一節があるのでここで紹介したいと思う。 セリーヌを手に取るほどの人ならきっと共感してくれるだろう。 「完全な敗北とは、要するに、忘れ去ること、とりわけ自分をくたばらせたものを 忘れ去ること、人間どもがどこまで意地悪か最後まで気づかずにあの世へ去っちまうことだ。 棺桶に片足を突っ込んだ時には、じたばたしてみたところで始まらない、 だけど水に流すのもいけない、何もかも逐一報告することだ、人間どもの中に 見つけ出した悪辣きわまる一面を。でなくちゃ死んでも死に切れるものじゃない。 それが果たせれば、一生は無駄じゃなかったというものだ」
51 人中、41人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
退屈とは無縁。,
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レビュー対象商品: 夜の果てへの旅〈上〉 (中公文庫) (文庫)
この本のイントロダクションと表紙を眺めると、「いやぁ、コイツは相当にヤバそうだなぁ」と思われるかもしれませんが、実はそうでもなくって、非情に文体も物語の構造も分かり易く、恐いとか辛いというよりは、カッコいいという印象の方がずっと強い作品でした。上下巻合わせて約800ページの長篇ですが、飽きないし、疲れないし(文字を読むという意味では)、ストーリーを見失わないし、素晴らしい出来だと思います。この物語は100%自伝的に書かれているのですが、セリーヌは自らの失態・カルマ・堕落の数々を余すことなく暴露します。いやむしろ、誇大に自らの汚さ、人間の汚さを着色している節さえあり、もちろんそれは悪者になりたいというような子供臭い目的でそうされたものではなく、それが彼にとってのリアリティーであったのであろうと読み手に共感を感じさせる、かなり異質タイプの作品だと思います。不思議と、あまり気分のいい話を聞かされているわけではないのに、読んでいてどっと落ち込むような気にはならず、むしろその人間臭さに手を叩きたくなるような体の物なのです。 まるでフランスのアングラ映画的ストーリーで、例えば日本で言うなら若かりし頃の大島渚タイプの映画監督などがこぞって映画化しそうな美しさで、とくにラストの車中での発砲の場面などは古典的な文学スタイルとは一線を慨しています。この作品を読むと、国内外の幾人かの作家がここからかなり影響を受けていることが見て取れます。公式に公の場で語り継がれるような名作とは対極にありながら、その存在感は決して今後数十年では色褪せないと確信させられます。
26 人中、21人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
一線を越えて「果て」へと向かう,
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レビュー対象商品: 夜の果てへの旅〈上〉 (中公文庫) (文庫)
たぶん人間には超えてしまったら戻れない「一線」みたいなのがあって、その向こうがおそらく「果て」なのだと思う。文章中に時折出てくる「果て」のフレーズはどれも、深い森の奥から聞こえてくる嘆きのようにじわりと重く響く。 主人公とその友ロバンソンは、生涯かけてその一線の淵をさまよい歩く。 人生という夜の中、一箇所にとどまれない放浪者が、果てを見すえつつ旅をしている。 一線を越えるか超えないかの話といい、アフリカという舞台といい、なんだかコンラッドの「闇の奥」を思い出すところがある。 戦争を否定し、偽善を否定し、友も家族も愛も嘘だとはねつける。 ある意味、正直で潔癖なのだろう。 だけど否定ばかりのその先には、いったい何が残るのか。 わかるけど共感したくはないなと思う自分は、精神的に健康なのか、それとも偽善に毒されているのか。 あるべき姿、希望はこの本にはない。 だからこそ、ある意味では普遍的だといえるのかもしれない。 印象として、夕闇に沈む光景のような本。 後ろには町の光があるのに、自分は光のない道の先ばかりを見てしまう。 その姿は虚しく、そして物悲しい。
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