子ども時代の「思い」をリアルに再現するタイプの小説といえば、姫野カオルコの「ツ、イ、ラ、ク」が思い出されるが、これは小学校1年生から6年生に育っていく女の子の連作短編。姫野さんはエッセーで、記憶の中を探り出すと、その世界のリアリティがあまりに強すぎて、現実になかなか帰ってこられない、というようなことを書いていたが、豊島さんもそういうタイプの人なんだろうと思う。そうした自分自身の過去の記憶からのリアリティを描写に混ぜ込みながら描く豊田さんのストーリーは、落としどころを、よくある物語から微妙にずらしてきて、それがなかなかに心地よい。ただし表題作でもあるラストの「夜の朝顔」はちょっときれいにまとめすぎで、そこまで築いてきた雰囲気を少々壊してしまっている感がある。僕が一番好きなのは「だって星はめぐるから」。学校のクラスメイトのいじめの話と、自分の妹との姉妹愛的な話が、不思議につながる感じがいい。