意外と評価が低いので驚きましたが、確かに編者の柴田元幸さんの好みがかなりはっきり出ているアンソロジーなので、「誰にでもまんべんなく受け入れられる」というタイプではないかもしれません。特に米国人作家に関してはものすごく編者の好みがはっきり出ています。
(対して英国作家は割と評価が定まっている人が多い)
ちょっと幻想的で、あれ?と驚くような思考の飛び方をする作品が多いです。
でも逆にいえば、柴田氏の訳した本が好みだという方には向いていると思います。
私はそういうタイプだったので、彼の編んだアンソロジーの中でもこれはかなり気に入っている作品集です。
著者の個性がよく出ている作品が多いので、まずこちらで読んで気に入ったら著作を読む、という入門編的な読み方も可能だと思います。
では気に入った作品をいくつか。
スティーブン・ミルハウザー「夜の姉妹団」
ミルハウザーの皮膚の薄そうな登場人物と繊細なガラス細工のような手触りの作品。
レベッカ・ブラウン「結婚の悦び」
レベッカ・ブラウンは大きく分けて二つの作品群があって、一つは自身の経験に基づいた作品で、もう一つがかなり幻想的な作品です。
で、こちらは幻想的な方。今は「私たちがやったこと」にも収められていますが、当時はかなりレアな作家(今では本国より日本の方が有名だそう)だったのでここで出会えて良かったなと思った事を覚えています。
結婚して、お祝いパーティをしているのだけど、あれ、パートナーは?という作品。これも繊細な語り手の不安感から生まれる不穏な幻想がひどく印象的でした。
スチュアート・ダイベックは「僕はしなかった」。
お年頃の少年が「する・しない」を語るとなれば、大体は何についてか想像できるでしょうが、その語り口がダイベックらしくて楽しめました。柴田氏の翻訳の語り口と、ダイベック作品に登場する男の子の語り口との相性は、とても良いと思います。
レベッカ・ゴールドスタイン「シャボン玉の幾何学と叶わぬ恋」
「シャボン玉」と「幾何学」と「恋」の組み合わせが面白い。
理知的に恋を語っている様が、いつの間にかあれれ?という感じ。
知性とナイーブさと、でもそのナイーブな神経すら客観視してしまう
どうしようもない理性とがないまぜになった感じが面白い。
ただ、この著者、その後探してみたけどなかなか著作が見つかりません。
ドナルド・バーセルミ
「アート・オブ・ベースボール」
「ドナルド・バーセルミの美味しいホームメード・スープ」
大御所バーセルミ。
特にスープの方は皮肉な笑いが楽しめます。
米国における正しい「ホームメード」スープの作り方とはどんななのか。
答えはこの作品に。
この作品集の中ではこのスープの話が一番直接的でわかりやすいかも。