タイトルも表紙デザインも文学作品風なのに、帯には霊感と未来を読む力の解明にのりだす渾身のノンフィクションと書いてある。どんな本かとわくわくして読み始めたが最後、1頁目から終わりまで憑かれた様に読んでしまった。「息もつかせぬ迫力」という帯コピーは、ただのキャッチコピーではなくてそのものずばり。かっちりした文体が幻想的な緊迫感をそそる。読み進めながら、これはフィクションでは無いのか、これが文中に出てきた「ファンタジー小説」なのではないかと何度も疑った。読み終わった後でも正直よく分からない。この取材企画を当初依頼した編集者サワダさんが本当に知りたかったのは、「『特別な能力を持った人間』がどうして能力を持ちながらも毎日朗らかに生きていけるのか」ということだったはず。でも、彼の依頼の方法ではその取材目標はあまり筆者に伝わっていないように思える。サワダさんは何でそんなにまだるっこしい頼み方をしたのか?彼の企画はこの出版元が「取材費」も含めて譲り受けたのか?著者はこの本の最終章で、「完成した原稿を木箱の中に厳重に封をしてしまい込んだ」と書くが、書いていた原稿というのは今私が読んでいる本では無かったのか?どうして筆者が見た恐ろしい夢が読者には現実であるかのように表現される必要があるのか?いやいや、そんな細かいことを考えるまでも無く、これは初めからノンフィクション風に編集されたフィクション?
でもこういった疑問は差し置いて、もしこれがノンフィクションだったなら、「現実」と「能力者がアクセスする世界」両方が混沌として混ざり始める中にあった著者の驚きや葛藤がリアルに伝わってくる。アリは空飛ぶ羽を手に入れようなどと思わず地面を這い続けるからアリなのであって、人間も別の世界が見え過ぎると人間ではなくなってしまうような。いろいろ考えさせられ、また怖くなる本だった。すっきりノンフィクションだと納得出来れば星5つにしたかった。