ムード歌謡みたいな味わい深いタイトルを持つ、吉本隆明と辺見庸の対談集です。内容に深みは全くありません。それなりにユニークな切り口で提示される独自の視点は、思想的な拡がりをもつことなく与太話に終始してしまいます。それでも読んでいて落語のように心地よく読めるのは、辺見の作家としての力量が語りの中にも独特のリズムを構築しているからでしょう。最後の部分で「消費資本主義」に対抗するために、アフリカと山谷が提示されますが、これはある種の「差別主義」なのではないかと思います。人間社会の「原型」をアフリカに求める吉本に対し、辺見が激しく反発します。吉本の「原型」への確信が、通俗的な「エコロジー」などとどう違うのか、明確にしたい辺見とそれを説明したい吉本ですが、いつまでたってもその差異がクリアーになることはありません。ただ二人が「消費資本主義」に対する違和感を共有しているのは確かで、それがポストモダンに対するモダンの違和感と重なる様が、ある種の世代論として興味深く読める部分でもあります。何かを「勉強」出来る本ではありませんが、読んで損したという気持ちにならず、それなりに充実した読後感が残る不思議な本です。