かなり技術的で面倒な記述の本書。しかし、まずは「あとがき」を読んでいただきたい。私は最初のフレーズでやられた。
「さて、一体全体これらのものを創作折紙と呼んでよいものでしょうか?なぜなら、これらの立体は以前から知られているものばかりだからです。正多面体は紀元前から研究されていますし、立方体や正8面体などは、人類が出現しようがしまいが、地球という惑星があろうがなかろうが、結晶構造等の形で自然に存在していたでしょう」
たったこれだけの遠慮がちな文章が、多面体と折紙に対する、著者の並々ならぬ何かを否応なく伝えてしまっているのではないかと思う。
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各項目は1-5ページで普通3ページくらい。立体名、概要、用紙、面の作図法、ユニットの折り方、組み方が入っている。補足説明やカコミが追加されている場合も多い。
用紙の説明は「一辺5/4 x √2/2 の正方形から作った正5角形 2枚 (正10角形)...」という感じ。続けて、そうした用紙を取る方法を説明している。
こうした部分を見ていると、折り紙の楽しさからはかけ離れた、頭でっかちな人の本なのかな、とすら思える。
しかし著者のバックグランドを見ると、そういうことではないのが解る。
2歳の頃から折り紙を始めて生物などを折っていた著者は、高校のときに一時折り紙から離れている。ところが素粒子物理学の大学院生だった1994年に、突然本書を自費出版してしまうのである。
折り紙の本、というものを大事にしていることも、記述の端々から解る。折り方の説明には、うまく折るために端折る工夫も数多く見られる。
つまり、もともと折り紙に傾倒していた人が多面体の数学に触れ、いろいろなものが湧き出てしまったために出てきたのが本書なのである。
いろいろな記述は、実はギリギリのところで成されている。
この緊張感は芸術ではないかとすら思う。
自費出版の翌年には日本文芸社がパブリックに出版し、私が買ったのは2008年10月の第15刷である。
とても根強い売れ方をしているのは、触れた人々がどうしても感じざるを得ない不思議な力強さのせいだと思う。
ぜひ触れてみてほしい。