本書は、多宇宙そのものではなく、多宇宙に至る道筋を述べるものです。
本書の前に
宇宙のランドスケープ 宇宙の謎にひも理論が答えを出す(以下、レ書といいます)を読んだのですが、本書の内容とかなりの部分で
重複しています。方向性も同じです。なお、訳者も同じ方です。
そこで、両者の比較を以下に述べます。
まず、本書の方が基本的な説明が多く、より少ない知識で読めます。
レ書は人間原理の説明が不足していたのに対して、本書では人間原理と
平凡原理に各1章を割り当てて説明しています。
宇宙定数を科学者が認めるに至った経緯やその証拠も、本書の方が分かり
やすいと思います。以上から、本書を先に読んだ方が良いと思います。
素粒子や超ひも理論からの説明はレ書の方が詳しいのですが、基礎知識が
ないと読み進むのが困難です。本書ではこれらの部分は、結論の全体像を
さらっと述べるに留めています。
レ書で分かりにくかった部分が本書で理解できた部分やその逆の部分が
あったので、本書を読んだ方はレ書も読んだ方が良いと思います。
ビッグバン、インフレーション、宇宙定数、超ひも理論(の無限解)などは、
我々の宇宙が「より大きな存在の中の1つ」としての構造性があることを
示し、人間原理や平凡原理を論理的に正しく用いると、多宇宙の必然性
が導かれるようです。
しかし、現時点ではその多宇宙はほぼ無限といえるほどの多さとなり、
我々の宇宙はより大きな存在の中では砂浜の中の一粒の砂よりも小さい
ことを導くため、それほどまでの多宇宙(しかも観測も検証も不能)を
肯定することに科学者がためらうのは当然ともいえます。
私はビッグバンを認めるならば、それが1回だけのはずはなく、複数で
あるならば、無限に至るというのはある意味当然であると考えますが、
これを否定する考えの根底には、「万物統一理論の放棄は科学の敗北だ。」
「別宇宙の存在は証明不能だ。」というものだけではなく、1神教の影響も
あるようですね。
まあ無限宇宙を認める考えは、輪廻転生に至るとも言えそうですが。
多宇宙と輪廻転生―人間原理のパラドクス