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11 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
言葉イラズ,
By M - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 外科室・海城発電 他5篇 (岩波文庫) (文庫)
泉鏡花の初期短篇作品集です。「春昼・春昼後刻」など後年の傑作へと受け継がれていく鏡花世界の原点である愛と死を主題とした美しい短篇が集められています。初期作品という事で物語の展開が極端で無理一杯ですが、そんな事は全然問題ではありません。寧ろ物語の進行が荒っぽい為に、いつもですと乳白色の霧やら白銀色の月の光やら綿の絨毯の様な春の雲が何重にも覆い被さって輪郭がぼんやりとしていた物語の深部が、ちらりちらりと読者にも垣間見えてある意味官能的でさえあります。色々と書き記すべきなのかもしれませんが、鏡花についてあれこれ評論したり解説したりするのは、月見草の咲く池端を土足で踏み荒らすかの如くひどく無粋な事だと心得ていますし、鏡花を読む=鏡花の世界に入る・鏡花を読する=鏡花の世界から帰ってくるという事なので帰還した今となっては何も書きようがありません。ただただ印象深い台詞や一節が川魚の様に頭の中をうろうろと泳いでいます。短篇「外科室」で外科医が愛と死の極限で発する一言“わすれません。”が、全てであり永遠に感じられてきっといつまでも忘れられないのです。
3 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
美の世界,
By スザンナ (神奈川) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 外科室・海城発電 他5篇 (岩波文庫) (文庫)
最初にこの作品の存在を知ったのは実は映画の宣伝でした。それまでは「泉鏡花」という作家の作品を読もうと思ったことも無かったのです。 映画のキャッチコピーが頭にずっと残っていて、気になってしょうがなかったのです。それは「ねむり薬は、うわごとを言うと申すから、私はそれがこわくってなりません」だったと思います。 この作品は、辻褄だとか現実感だとかそんなものは一切考慮せずに、その場の(外科室内の)情景の美しさを堪能していただきたいのです。 わたしはなんといってもこの「外科室」が好きですが、「夜行巡査」「琵琶伝」「海城発電」も心に響きました。 男女の愛は美しいものですが、偲ぶ愛はさらに美しく、ついには破滅へと導くような愛はさらにさらに美しい。成就しないからこその美なのです。 映画は、後からビデオで見ました。私はたいへん良かったと思います。余計なシーンもありましたが、ほぼ原作に忠実に作ってありました。 ただ、難をいうなら貴船伯爵夫人はミスキャストだったように思います。高峰外科部長は非常によかったですけれども。 リクツに合わない話は我慢ならない、という方にはこの本をおすすめしません。
5 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
当時のメディア検閲は如何?,
By
レビュー対象商品: 外科室・海城発電 他5篇 (岩波文庫) (文庫)
「外科室」については、同名の映画がすっかりメジャーになったために内容については疾くご承知であろう。日本の純愛物語の最初期に属する話である。むしろ、タイトルにもなっている「海城発電」に着目したい。これは題だけではいったい何のことやらまったくわからないが、海城は地名であり、そこからの電報についての小説である。これはれっきとした反戦・反差別小説だ。いくら欧州の文学の影響が入ってきていたといっても、この時期にこのような内容の文学が書かれたということにまず驚きを覚える。さらにそれが発禁にならなかったこともびっくりさせられる。 伝奇文学としての鏡花というイメージのみをお持ちの方には一読をお勧めしたいと思う。
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