この作品は医師でもあり、推理小説作家、そして随筆家でもある海堂尊氏がバチスタ手術を日本で初めて行った心臓外科医として有名な須磨久善氏を描いた準ドキュメンタリーです。海堂氏らしく、少々誇張された?と思われる記載があるものの、須磨先生の心臓外科医としてブレのない透徹した生き様を生き生きと描写しています。手術の技量を上げるに当たって、一発で決める、無駄は省くという言葉には目から鱗の落ちる思いでした。外科医はアスリートであり、アーティストであるという部分も先生の足元にも及びませんが、技術系の世界で生きる同じ医師として共感できるものがありました。最終章はやや蛇足の感がありますが、須磨久善という人間を知り、時代の「破境者」として生きる姿には大いに励まされるものがありました。登る山の高さは違いますが、もうしばらく、臨床の一線に立ち、学術活動も可能な限り頑張ろうと思います。医学を目指す人以外でも人間の生き方を考えさせられる良い本だと思います。若い人達には既存の価値観に縛られず、自由な発想と創意で時代を切り開いてもらいたいものです。