先日「
セックス・トラフィック [DVD]」という英国製のテレビドラマを見ましたが、そこには国家の軍隊だけではなく、民間の警備会社が国家規模の紛争地の警備を行なっている様子が描かれていました。このドラマは民間軍事会社(PMC=Private Military Company)がそもそも存在することが周知の事実であるかのように詳しい説明もないまま当たり前のように描いていたことに驚きを感じたものです。
本書はこうしたPMCの実態について著者が海外に実際に足を運んで詳細に描いた労作ルポルタージュです。著者は東京財団のリサーチ・フェロー。財団の研究プロジェクトの結果書き上げられたものです。
冷戦構造の崩壊によって旧来型の大規模軍事システムや情報機関を縮小したアメリカなどが、その一方で中東やアフリカでの新しい国家対立や内戦にコミットせざるをえない事態が生まれています。軍事予算の制約の結果、国家の安全保障にかかわる機能を民間会社にアウトソーシングせざるをえないというのが、PMC台頭の裏にあることが本書でよくわかります。
軍の精鋭部隊OBたちがかかわるPMCが、逆に国の軍隊を訓練するまでに至っているという驚愕の事態も描写されています。
さらに本書の後半では、戦地取材に赴くジャーナリストにリスク管理の訓練をほどこす様子を、著者自らが訓練に参加してつぶさに記していますが、これも興味が尽きない部分でした。
戦争に限らず、民間委託は確かにコスト上の利点を履行することは出来るかもしれませんが、片方で経済優先によってリスク管理がおざなりになってしまっている欠点を本書はつまびらかにしていきます。公的性格の強いサービス業務を官と民のどちらが行なうべきか。その永遠のテーマを、本書は軍事というフィールドでみつめた大変興味深い書といえるでしょう。