外国人留学生の方の日本語講師を務める著者が、その経験から「日本語を外国語として意識する」必要性を感じ、その教授法の要諦を纏めたもの。また、国語文法の意識下にある「海中に隠れている日本語」の"謎解き"をする由なので、こちらも楽しみである。だが、次の二文の違いを説明出来ないとなると、著者の語学力が少し心配になる。
(a) 手紙を書いています。 (現在進行形)
(b) ドアが開いています。 (状態--「is open」)
「アクセント」の章は、概ね平凡で、「プロミネンス(の概念)は世界共通」等と当たり前の事が書いてある。世代間でアクセントが異なる日本人の問題に話題を拡げる等の工夫が欲しかった。コンピュータが発する音声についても認識不足で、強弱・抑揚・高低を取り入れた音声合成ソフトが既に実用化されている。「動詞」の章は、日本人が意識しない"日本語文法"を紹介していて興味深いが、やはり講義録を引き写しているようで発展性に乏しい。「形容詞と受身」の章は、"形容詞も活用する"点を指摘して読み手をドキッとさせ、更に受動態と連携させる事によって本作では一番新規性があった。「待遇表現」の章は要は敬語の使い方である。日本人でも難しい問題であり、それを短い文章でよく纏めている。この問題を本格的に扱うには一冊必要だろう。「語彙」の章は、和語と漢語と外来語が混在している日本語において、この分量で説明するのはキツイ。
全体として、外国人留学生の方に日本語を教える際の工夫・苦労が経験談に基づき纏められている。講師の方には役に立つ本かもしれないが、「海中に隠れている日本語」の"謎解き"は何処に行ってしまったのだろうか ? それも含め、世代間のギャップが大きくなっている日本語の現状と未来を展望・分析する等の幅広い論考が欲しかった。