年を取ると、壊れたレコードのように過去の自慢話を繰り返しがちになるが、外務省に約35年勤めた河東氏の本には、その手の話は一切出てこない。また、近年よく見られるような外務省への非難や暴露本といった類からも、この本は離れている。自己抑制が効いているからだろう。
"日本の外交官"を軸に、広範な話題を一人で扱うのは元来難しいものだが、長年のキャリアゆえの現場体験から、例えば大使館の仕事、途上国での任務、東京(本省)の位置、ODAの価値などが、多角的に、内実ともによく説明されている。
かといって、高度な専門書を目指しておらず、特に第二章では、自身の学生時代から在外留学研修までの駆け出しの頃を、カジュアルな筆致で描いており、とても面白い。
「外交官はつらいよ」と感じる箇所は多々あるが、別に同情を求めているわけではない。ただ現状を伝えているのであり、だからこそ、読んで日本の外交官への漠然としたイメージを払拭することができる。
ただ、注意したい点もある。
「国会、政治家との関係では、日常の接触が重要だ」という記述があるが、元外交官に当然の如くそう書かせてしまうのは政治家に問題があり、今の関係は本来不健全なのだ。それに、官僚側もこの習慣に呑まれてしまっている。
そこで、内部の価値観とは無縁の読者一人ひとりが、この本をきっかけに、市民レベルで政治家と官僚の動きを抑制する目を持つことが大切だと分かる。