本書は
NHK土曜ドラマ〈09.11.14〜12.19 O.A. 主演:渡部篤郎〉の原作となった『
外事警察』の続編であり、この度の映画化〈2012年6月2日公開〉の原案となった諜報小説である(必ずしも映画のノベライズというワケではないようだ)。
外事警察の内部資料流出事件によって明らかにされた〈協力者〉である女性:ジャスミン。
彼女を巡って存在を隠蔽しようとする日本の外事警察と密かに追う韓国NIS(国家情報院)、FBI捜査官。その背景には核に関わる脅威が描かれており、前作以上に緊迫したサスペンス内容となっている。
かつて住友の部下であり、今回の流出事件の調査任務となった松沢陽菜(現:公安警察巡査部長)、松沢の上司である倉田俊貴(警視正)、流出事件の〈協力者〉の情報に関心を寄せる作家・正岡剛也、正岡に情報を流して〈協力者〉を守ろうとする男・カナザワ(金沢涼雅、注:元外事3課で住本の元部下)、流出事件により、クローズアップされた〈協力者〉を監視する韓国NIS工作員・リュ・ドヨン、そして前回の任務で廃人同様となった外事3課の元主任・住本健司…。
イスラム過激派組織『ハッカーニ・ネットワーク』による大量破壊兵器のテロ計画に関係するジャスミンに接触を求めて日・韓・米の工作部隊が暗躍する展開はスリリングで今回も徹底した取材をフルに活かして物語としては面白いのだが、どうも登場人物たちが頭に入ってこず(読み手の問題もあるのかもしれないが)、例えば、同じ軍事物を手がける
福井晴敏氏の作品では著者ほどの取材量や情報量はなくとも人物や物語が自然と頭に入ってきやすいのだ(ジャンルは違えども
東野圭吾氏や
宮部みゆき氏にも同様の感想がいえる)。前作同様、今回も登場人物が多く出演するため誰が誰なのかを整理して読むのに苦労しており、事前にキャラ紹介をしてもらえると助かるのだが…。
著者・麻生氏の作品は情報的な側面では多々面白いのだが、登場人物に関してはさほど人間味を感じさせないというか上記に挙げた著者たちほどの魅力は感じないのだ。その辺りが麻生作品の欠点かもしれない。
追記…他の方も指摘されていたが、今回登場する作家・正岡剛也のモデルは著者自身なのだろうか、だとすると著者もこのような分野を手がけるにあたって物語同様、危険が付きまとっているのかも?と心配せずにはいられず、その意味では面白い。