なぎらけんいちの名を知ったのは、小6の頃、「悲惨な戦い」をラジオで耳にしてから(おいおい、もう30年以上だよ)である。今、振り返ってみれば、とっても牧歌的な、たわいない唄で、目くじら立てるようなものじゃない気がするんだけど、「放送禁止歌」ってことで、「柏村武昭のサテライトNo.1」(RCC中国放送)なんかで異様に盛り上がってたんだよな。それより、あの、ある種の物語を長々と弾き語るスタイルとか、「何かつかむ物はありませんかと目をこらして見たら目の前にあった」ってオチのニュアンスとかって、のちのさだまさし「雨やどり」「親父の一番長い日」に影響与えていると俺は睨んでるんだけどな。
今や下町ご意見番としてバラエティー番組には欠かせない重宝な存在だけど、この本読むと、テレビの姿はなぎら健壱のほんの一部でしかないことがわかる。お座敷のお声が掛かればテレビでもなんでも出るんだろうけど、決してテレビに囚われないってスタンス。芸能人の端くれっていうプロの矜持と、自由人としての力の抜け具合、堅気の人に対する謙虚さ、東京っ子としての誇り、みたいなものがうまくバランス取れてて、やっぱ只者じゃないんだよな。なぎら健壱のそうした器の凄さや人生観は文中の言葉の端々にも垣間見られるんだけど、このお店のラインナップがもっとも端的になぎら健壱を表現しているよね。そして、一つ一つのお店との関わり方がね。最初、普通のグルメガイドのように、気になるお店に付箋貼ってたんだけど、どれもこれも付箋だらけになったので、馬鹿らしくて全部はずした(笑)。それだけにトリの「新日の基」の致命的な表記ミスはもったいない。これって100%、編集の責任だし、ふつうの呑み助なら校正段階で絶対気付くはずなんだけどなぁ。