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夏草冬涛 (下) (新潮文庫)
 
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夏草冬涛 (下) (新潮文庫) [文庫]

井上 靖
5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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登録情報

  • 文庫: 378ページ
  • 出版社: 新潮社 (1989/05)
  • ISBN-10: 4101063346
  • ISBN-13: 978-4101063348
  • 発売日: 1989/05
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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『夏草冬涛』は、大正時代の伊豆で育つ少年洪作の生活を描いた『しろばんば』の続きです。
 中学生になった洪作は、三島の伯母さんのところに下宿し、沼津の中学に徒歩で通っています。優等生だったのに、成績が急降下しはじめた洪作。自分でも成績が落ちるのはまずいとは時々焦ったりしながらも、勉強より、一年上級の自由奔放な文学少年たちとの交流にひかれていきます。だからといって洪作自身がとくに文学少年なわけでなく、洪作自身は「友達次第で優等生にも不良にもなれる」ような普通の思春期の少年。従って「早熟で無頼な秀才文学少年の転落物語」といった濃い話ではないです。新しいものと出会ったり自分と違う世界をかいま見たりする中、いろいろな要素で影響されやすい思春期の少年の心のうごきが等身大でさらさらと描かれています。
「上品」で「都会風」な親子のところに遊びに行って出された羊羹の切り方の厚さにひそかに動揺したり、自分より後輩の少年がチェーホフを読んだというのをきいて「自分より年下なのになんでチェーホフなんて自分が知らない作家の名前を知ってるんだろう」と焦ったり、「成績が落ちたら伯母のところの下宿をやめさせ、寺に下宿させる」といわれて寺に行くのがいやで病気になるほど猛勉強したのに、自由奔放な文学少年たちに「寺?いいなあ」とうらやましがられた途端、寺も悪くないような気がしてきて、勉強するのやめちゃったり、「この小説読み出したらやめられないほど面白い」といわれて、「読み出したらやめられないような小説なんて本当にあるのか?」と思ったり。
 このシリーズは、井上靖の自伝的要素の濃い小説(自伝ではないけれども)といわれています。作家が自伝的要素を主人公に投影して書く場合、頭の良さや早熟ぶりを強調するなどナルシシズムの要素が濃くなったり、あるいはナルシシズムに陥るのを忌避するあまり自嘲的自虐的になってしまったり、もしくは、小説を面白くするためにわざと主人公の「人と違った個性」を強調することも多いと思うのですが、そうならずに、どこにでもいるような普通の少年を書いていて、しかも面白いあたり、さすが大文豪井上靖だと思いました。
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3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 十満 光一 トップ1000レビュアー VINE™ メンバー
北の海を読んで、本作品の存在を知りました。
順番でいうと、しろばんば、本作品、北の海と読んだほうが
時系列的に分かりやすいかもしれませんが、
十分楽しませて頂きました。
主人公の洪作と三人組との出会いにより、心の中にもともとあったと思われる自由奔放への憧れのスイッチがオンになり影響を受け、
海辺を駆け、詩を歌い、新たな自己像を作り上げていきます。
北の海に優るとも劣らない秀逸作品です。
こちらも何度も読み返したいです。汽車の中で北の海を見ながら。
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少年時代 2010/5/6
By 山猫大尉 トップ500レビュアー
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 しろばんばから読んでいました。主人公の洪作少年は中学三年生というから15歳前後かと思っていたのですが旧制中学校で18歳ぐらいだとか。そう見るとずいぶん幼く見えてしまいます。放埓に生きる先輩たちに憧れその仲間に入っていきます。自由奔放に生きている先輩たちですが、その一方で本を読み、高尚な思考にふけっています。かたや洪作少年は自堕落な部分にのみあこがれて模倣するようになります。かつての村一番の秀才少年も見る影ありません。いい感じです。

 若者たちの放埓な振る舞いの例を挙げると「学校をサボる」「タバコをすう」「食事に招待されて勝手に行く人数を増やす」「客先で機嫌が悪くなりテーブルをひっくり返そうとする」「他人の家の庭で殴り合いのケンカを始めようとする」「病人の友人と2階の窓から抜け出す」「帰宅のための電車代でラーメンを食べる」「連絡もせずに家の人に心配をかける」「家財道具を買うために貰ったお金で旅行に行く」「人の家に呼ばれている途中で海で泳ごうとする」「自分のせいで船の出港を待たせているのにのんびりしている」 あれ?たいしたことないのかな??

 物は無くとも充実した時代だったようです。
 
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