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文庫版は上下巻に分かれているが、ちょうど上巻は一介の豪族から四国の覇王になるまでの飛躍と発展の前半生、下巻は苦悩と屈辱の後半生という構成になる。
上巻は勝ち戦が多くて痛快な部分が多いが、本書の真髄は下巻にこそあるように思える。秀吉の大軍勢が四国討伐のために上陸するときは恐怖を感じるし、屈辱的なシーンでは、読んでいる自分自身が野望を砕かれたような気持ちになる。
特に、元親が秀吉の軍門に下ると決意したとき、妻の菜々が夫元親の長年の苦労をねぎらう場面では、その静かな描写の中から、悔しさが自分のことのように込み上げてくる。この妻の菜々が物語の中で明るい性格に設定されており、読んでいて心が和まされる。
また、元親自身も単なる英雄ではなく、悩みや性格的欠陥を持った人物として描かれているので、手が届きそうな一人の人間として親しみが湧く。
真田幸村など、負けた者に対して美しさを感じる人にとっては、感動できる作品になると思います。
ちなみに、本書の主人公である元親の子、盛親の物語は、同じ司馬遼太郎氏の「戦雲の夢」で読むことができ、親子二代続けての物語として楽しむことができます。
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