ちくま文庫『夏目漱石全集〈1〉』です。
内容は、『吾輩は猫である』一作のみです。
言わずと知れた夏目漱石の出世作にして、日本文学史上の有名作品です。
登場人物にはそれぞれモデルがいるらしく、主人公は明らかに漱石自身でしょうけど。同時代人が読めば、より楽しめていたのでしょう。モデルが誰かは知らなくても、普通に読むことができますけど。
語り手は言うまでもなく猫。
猫ではあるけど、人間的でありながら、それでいて猫らしい仕草があちこちにあって、微笑ましいです。猫の様子というのも、よく観察して描いているようです。
猫の目を通してだからこそ、人間というものを風刺して鋭いツッコミをできるというのは、ネタとして優れていたと感じます。
ストーリー的には、残念ながらあまりありません。猫があっちへ行って人間の様子を見て、こっちへ行ってネズミを追うとか何かする、という感じです。ストーリー的な締まりが無いにもかかわらず、ダラダラした感じは受けずに楽しく読むことができるのは、豊富な語彙と知識を駆使している猫のユーモラスな語り口があってのことでしょう。
ストーリーの流れが無いので、ラストが唐突に終わってしまうのがなんとももったいないようにも感じます。
日本人なら誰でもが名前だけなら知っている有名作品ですが、長いこともあって、実際に読んだことのある人というのは減っているのではないでしょうか。昔の文系男子ならともかく、最近では国語の教科書でも漱石や鴎外が無いという話も聞きますし。
評価はストーリーの物足りなさを差し引いて★4.5といったところです。アマゾンでは4か5か選ばなければならないので、古典に触れていない未読の若い人が過度な期待を抱かないよう4とします。