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10 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
圧倒的名作の直筆原稿版,
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レビュー対象商品: 夏の闇―直筆原稿縮刷版 (単行本)
初めて読んだ時、読み終わるのが惜しくて行きつ戻りつしながら読んだ開高健氏の名作が直筆原稿版で読めるとあって、即購入しました。完成度の高い原稿を入稿されるという開高氏ですが、それでも原稿用紙には表現に手を入れる過程、創作の過程が如実に見て取れ、繰り返し読んだ作品の舞台裏を知ることができ大満足です。 作家自身がこうした創作の舞台裏を明かされる事をどう感じるかは複雑なものもありますが、既に完成された作品で評価を築いた大作家だからこそ、その作品が生み出されるプロセスもまたファンとしては求めてしまいます。 直筆原稿版は、あたかも原稿を受け取った編集者が最初にその作品を読んだ時の様な気持ちを疑似体験できるという意味でも、非常に贅沢な時間を与えてくれます。開高健作品を愛読する人ならば、購入を迷う必要のない一冊。
5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
生々しい感銘,
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レビュー対象商品: 夏の闇―直筆原稿縮刷版 (単行本)
得がたい読書体験である。均一・画一・整然の活字面で読んだはずの書物の頁が、突然、隆起して走り出す。開高健が走っている。一言一句の日本語と格闘し、節と節の間、文章と文章の間で呻吟し、時に停止し、時に後退しつつ、作家開高健は走っている。彼のじめじめした発汗と体臭が、読むものに伝わり、ゴールまで一緒に行く他ない。「開高健の直筆原稿はいつも書き直しや消しの殆どない完全原稿でした」とは、巻末に収録されているかつての担当編集者の言であるが、編集者に渡す前に相当な書き直しや消しがあったであろうことは、想像に難くない。本書は印刷直前まで、その上に更に推敲を重ねた最終原稿で、活字本ではとうてい窺い知れないが、ゴールへ到達するまでは、白く平坦な道もあるけれど、峻厳な起伏に満ちた崖と谷が沢山あったことが生々しく披瀝される。字体は、誰にも親しみやすく丸みを帯びて、端麗・達筆とは程遠いが、丁寧である。 直筆原稿ならではの余談だが、「憂鬱」「薔薇」「川獺」「霞」という漢字は書き直しなくサスガと思わされる一方、何度も出てくる「正確」の「確」や、「破壊」の「壊」、「専門」の「門」、それに「膝」の漢字はどうみても教科書的にはマチガイである。こういうささやかなマチガイ探しも、伴走者にとって、密かな愉しみなのである。 一番収穫だったのは、有名な締めくくりの一行。当初の「明日の朝、南行きの席を予約する。」が、最終的に「明日の朝、十時だ。」と改められたことが分かる。「夏の闇」は、この締めくくり以外にはないと思わせられる名文であるが、ここに辿り着くまでに開高健は、どれだけの推敲の長丁場に耐えたことだろうか。― 繰り返しになるが、作家がその作品を産み出すまでにいたる苦吟のプロセスを生々しく感じとることの出来る、稀有な読書体験であった。
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