登録情報
|
|
あなたのご意見やご感想を教えてください:
|
||||||||||||||||||||||
|
最も参考になったカスタマーレビュー
3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
美しく鮮やかな作品世界が深く心に刻まれる抒情SF中短編集。,
By
Amazonが確認した購入(詳細)
レビュー対象商品: 夏の涯ての島 (プラチナ・ファンタジイ) (単行本)
英国抒情派SFの旗手イアン・R・マクラウドの秀作7編を収めた日本では初出版となる待望の中短編集です。本書には現代に生きる人々の日常を、SF/ファンタジー的な奇想・趣向で包み込んで著者独特の感性で練り上げた作品世界が展開されています。個々の作品のテーマは淡く幻想的な性質ですが、不思議と物語の粗筋は記憶に残り深く心に刻み込まれます。私の考えとして本書の各編を味わう上での心構えは、どういう結末を迎えるかを期待するような読み方ではなく、印象的なシーンを心にとどめて噛み締めるといった方法が適していると思います。特に感じたのは短編では然程ではないですが、中編に於いて著者の体内時間と我々の暮らす現代社会の時間とは相当に開きがあるなという印象で、本当に緩やかに流れる文体を気持ちに余裕を持ってゆったりとした気持ちで味わう必要があるなと痛感しました。『帰還』平行宇宙に旅立った男が幾度も我が家へ帰って来て同じ行動を繰り返すという凝った筋立てですが、現代の無味乾燥になってしまった家族の姿が暗示されています。『わが家のサッカーボール』動物に変身する能力を気晴らしにする未来の家族が描かれており、本書中で最も明るい物語です。『ドレイクの方程式に新しい光を』人類の進歩は進むが異星人との遭遇の可能性は閉ざされた未来社会で、現実と折り合わず見果てぬ夢を追い続ける男の幻想的でほろ苦い恋を描きます。『夏の涯ての島』1940年代ファシズムに突入していくもうひとつの英国のもう一人のヒトラーは少年時代私が愛した青年だった。青春のきらめきと老境の心情を綴った人生晩年の愛惜の物語です。他に著者の創造した未来史〈10001世界〉物等3編を収めた本書は、読み手によって異なる感情が呼び起こされる鮮やかで美しく誠に味わい深い一冊といえるでしょう。
1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
言葉に頼らずSFの持つ力にもっと頼ったら傑作になると思います,
By
レビュー対象商品: 夏の涯ての島 (プラチナ・ファンタジイ) (単行本)
プラチナ・ファンタジー叢書の1冊ですが、ファンタジーというよりSFの短編集です。叙情的な作風が、SFガジェットが苦手でファンタジー好きな人にも好まれやすいという判断でしょうか。 作品はどれをとってもなにしろ叙情的、甘くはないけれどセンチメンタル--はっきり言って、叙情性が過ぎる印象です。 言葉にできない淡い恋慕や過去への感傷、哀愁--そういったものを表現にするのに、ジャンルSFは色々なしかけやアイデアを用意することで、安直に流れない工夫ができるというのがひとつの大きなメリットだと思っています。が、この作品集では、すべてが心理描写の言葉で連綿と綴られています。それも過剰なほどに。少し飽きてしまうほどに。 こんなに言葉を連ねなくても、ちょっとした設定だけで、人物の想いをもっとずっと鮮やかに表現することができたんじゃないか、それがSFの持つ力なんじゃないのか...どうも読後にこの疑問が頭に残っています。 なので、秀作とは思いますが、個人的には傑作とは思えません。 惜しいなという印象なので、今後他の作品も読んでみたい作家ではありますが。
9 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
記憶--「運命のページと自分を結びつけるリンク」を見つけること,
By
レビュー対象商品: 夏の涯ての島 (プラチナ・ファンタジイ) (単行本)
いずれの作品も多元宇宙、ナノテク、未来史神話などのSF/ファンタジー世界が舞台なのですがその背景やディテールはかなりぼやけています。むしろ夢を追い続けるかわりに失ったものの喪失感を埋めていくための時間や愛情などの過程を繊細に描くことに主点が置かれてるようです。そして巧妙なのは記憶の使い方です。自分の子供に自分が子供の時に聞きたかった質問をされたとき、自らの少年時代の記憶が想起されふと自分に『帰還』したような気分になることもあるでしょう。 心の奥にしまってた辛い記憶が不意に蘇えり物置きに放置してた『わが家のサッカーボール』を抱きしめなければ情動の嵐に自己が崩壊してしまう、そんな記憶もあるでしょう。 経験を積んでこそ見えてくる真実というものがあります。その真実によってしか全体を眺望できない記憶もあるのでしょう。悪運が宿っているという視線にさらされ『チョップ・ガール』として疎まれた者の記憶がそうです。 記憶の不確かさで苦しむこともあるのですが逆に記憶の曖昧さが心を甘くしてくれることもあるはずです。記憶こそがその人の証でもあるのですが生きていくためにはそれとは知らずに記憶を創りあげることもあるのでしょう。人々の記憶と記述の集成である歴史についてもそんなことがあるのかもしれません。『夏の涯ての島』のように。 その他の作品も記憶を各自のやり方で修飾しながら最終的には自己存在を確認する旅のようなものをしてきたか、これからする人たちの物語なのです。 そして絶頂は『ドレイクの方程式に新しい光を』で「幸福と悲しみがごたまぜになった記憶」がダークブルーのドレスの女性で想起される過程。強烈な酸味とともにしか思い出せないような出来事が時とともに丸くなり甘美なアロマをともなうような記憶となる熟成過程、それが生きるということなのかもしれません。そんな風にちょっとメロウでスロウにさせてくれる作品集です。
あなたのご意見やご感想を教えてください: 自分のレビューを作成する
|
最近のカスタマーレビュー |
|
この商品のクチコミ一覧
クチコミを検索
|
関連するクチコミ一覧
|
|
|
|