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知恵を身につけ、安らかに生きることを放棄し、文明と呼ばれるものを築き上げてきた現代の人類が、人類以外の地球――宇宙――この世界と完全に同化することはできるのだろうか?人類と世界とのあいだを揺れ動きながら真摯に生きる姿は、なにかやさしく厳しく大きなるものにつつまれながらも、やはり孤独である。
池澤夏樹という作家の文体や言葉や考察の方向性に、すでに、自分の中である形を与えてしまった読者にとって、あとからこの小説を読んでその世界に浸りきることはむずかしくはないか。漂流し、孤島生活をはじめた主人公ヤスシ・キムラが「書き記す」物語である本書の言葉が、わたしたちの知る池澤の言葉そのものであるからだ。池澤に匹敵する特異な流麗さで、ヤシ(という呼称を主人公は提案する)が文章を書いていることに、わたしなどはどうしても違和感を覚えた。
物語では、主人公の漂流から島での生活のおそらく最終段階までが、本人の手により極めて冷静に綿々とつづられる。島は無人島であるのだが、ある時大きな変化が訪れる。主人公はとまどい、そして受け入れる。それまで波音や雨風とともに受け入れてきたすべてのものと同じように。読者はヤシの一挙手一投足を、精霊の目、大いなる宇宙の目となって追うことになる。読後感さわやか、というより、正体不明のつむじ風が心に住みつき、それが何なのか確かめたくて、また最初から読んでみたくなる、そんな小説……。
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