同社からハードカバーで刊行されていた池内紀訳カフカ小説全集を、新書版の白水社uブックスで改訂再刊した1冊である。ハードカバーで読もうと思っていたが、スペースなどの問題もあり、二の足を踏んでいたのだが、新書なら有難い。
池内訳はこなれており、するりと読むことができるので、翻訳嫌いの読者にも受け入れやすいだろう。
いまこの小説を読むとすると、不条理なんて安易な言葉で片づけられない。やはりこれは身体と病気の問題なのだろう。うつ病のケアや脳梗塞発作、認知症患者などの介護問題にあまりにも近すぎる。
カフカのプロフィールに触れた解説も興味深い。原書初版の表紙の書影が掲載されているが、そこには主人公の姿を描かないようにカフカ自身が指定したという。結果として、エドワード・ゴーリーのような不気味な雰囲気になっていたのは面白い。