若い世代の著した聞き書きの最高峰のひとつに数えあげられる名著です。著者の木村さんより少し上の年代として、このような書物を待ち望んでいました。
さて、立花隆さんの序文にもあるように、木村さんは全文を5回は書き直している、その実り、息遣いが、行間から立ちこめてきます。また、副題も評伝ではなく「肖像」としているところが控えめに的を射ていると思います。
中身について僕がとりわけすばらしいと思ったのは、木村さんの学生時代の問題意識が質問にぽつりぽつりと現れてきていて、それが嫌味でなく、とても質の高い切実さを伴っていることです。抑制が効いていますが、僕にも覚えのある人生問題に対してとても率直なんですね。そしてまた対象の作家先生方も木村さんの質問に、それぞれの芸風を彩りとして添えながら、誠実に、的確に、歯切れよく、先達として精一杯の対応をしていることが読み取れる、ことです。
これはインタビュアとしての木村さんのお人柄なのでしょうね。同時に、こうした先達と接することのできた木村さんは幸せだなあと、うらやましく思いました。書いて成長するってこういうことなのですね。
そう、こうしてレビューを書いていて思ったのは、この本は「知性とコミュニケーションにおける誠実さ」があふれているということです。薫陶、というのかな。ほんとうにいい本です。僕は木村さんのファンになりました。
そうして、そのような木村さんを生んだことが埴谷さんの「まわりの人たちを励まし、勇気づける」美徳の、最後の、最高の仕事になったのでしょう。